研究実績の概要 |
これまでの課題として、組織からの死細胞の分離法が最重要であった。目的細胞の分離に用いる特異的なマーカーでsortする前に、Propidium iodide (PI) 陰性細胞をまず除去することとした。PI陰性細胞を分離後、特異的なマーカーで染色を行い、分離を行った。これにより、CD45-CD44+CD90+細胞のFACSにおける分布は陽性患者と陰性患者の2極化し、分離した細胞のCD44の発現を調べると、FACSの発現に一致した発現パターンが得られた。次に、血液から回収したCD45-CD44+CD90+細胞のmRNA発現パターンと対比すると、興味深いことに、アルブミンの発現はこれらの癌細胞において保たれており、健常者のCD45+細胞にはアルブミンの発現は検出できなかった。さらに、組織から得られたこれらの癌細胞と比較して、血中癌細胞におけるCD44、およびVimentinの発現は著明に上昇し、E-cadherinの発現は劇的に減少した。CD44とVimentinの発現パターンはまったく同じであり、これまで得られたCD44がEMT markerとして有用であるという我々の報告(Mima K, Okabe H et al. Cancer Res 2012)と矛盾しない結果が得られた(Okabe H et al. Br J Cancer 2014)。今回用いたCD44, CD90は何れも間葉系のマーカーであり、EpCAMといった上皮系のマーカーとは発現パターンが排他的であることが報告されている。したがって、今回検出したCD45-CD44+CD90+細胞を認める肝細胞癌患者は、EpCAM陽性患者と分子生物学的に異なる集団を検出していると考えられる。EpCAM発現細胞とこれらの間葉系の特性を有する血中癌細胞のゲノム上の特性やシグナル解析を進めていく必要がある。
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