研究課題/領域番号 |
24592441
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 千鶴 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80347054)
|
研究分担者 |
年森 清隆 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20094097)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 精子 / 卵活性化能 / 核周囲物質 / 中心体関連タンパク質 / MN13 / ODF2 / equatorin |
研究概要 |
精子の卵活性化能を評価するために、【1】初期卵活性化能 (受精卵の減数分裂の再開)と【2】後期卵活性化能(受精卵の微小管形成の促進)に分け、【3】ヒト精子の卵活性化能の評価のためのマウス実験系システムを構築することを最終目標とし、3年間の研究目的をたてた。平成24年度は、【目的1】に対しては、Equatorin-EGFP TGマウスおよび野生型マウスの精巣を用いて、精子形成におけるequatorinの発現および輸送過程を高解像顕微鏡、STED CW、透過型電子顕微鏡(免疫金コロイド法)を用いて解析した。その結果、equatorinが先体膜とその周囲の基質と複合体を形成していることが示唆されたため、これに相応した新しい名称 (COMAM, CIMAM, CAMM)を提唱し、論文に発表した。また、ヒト成熟精子と精巣におけるequatorinの発現をMN9抗体と新しく作製したEquatorin59-72番目のアミノ酸残基をエピトープとするhEQT抗体を用いて、ヒト先体マーカーとしての有効性を比較検討した。【目的2】に対しては、ODF2-2α-EGFP TGマウスのODF2-2α-EGFP遺伝子が導入された染色体を同定した。現在、同染色体上に導入遺伝子をもつ雄と雌を交配させて両アリルにODF2-2α-EGFPが導入されたマウスを作製中である。また、中心体に局在するODF2アイソタイプであるODF2-4に赤色蛍光タンパク質mCherryを繋ぎカルメジンプロモーターをつけたvectorを作製し、常法通りの方法で遺伝子改変マウスを作製中である。【目的3】に対しては、健常者および不妊患者の射出精子を用いて、抗equatorin抗体と抗MN13抗体がそれぞれ、ヒト精子マーカーとなること、また、これらの抗体を用いることによって患者精子の質の違いを個別に評価できることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画【1-1】に対しては、作製したPLCζ-Venus TGマウスが発色しなかったため、現在、MN13の同定を進めている。【1-2】に対しては、EQT-EGFP TGマウスの精巣を用いて、精子形成におけるEQTの発現および輸送過程を解析し、その結果を日本顕微鏡学会第68回学術講演会およびCell and Tissue Research誌に発表した(Ito et al., 2013 in press. doi: 10.1007/s00441-013-1605-y)。【2】に対しては、ODF2-2α-EGFP TGマウスの遺伝子が導入された染色体を同定し、同染色体上に導入遺伝子をもつ雄と雌を交配させて両アリルにODF2-2α-EGFPが導入されたマウスを作製中である。また、ODF2-4に、赤色蛍光タンパク質mCherryを繋ぎカルメジンプロモーターをつけたvectorを作製し、B6系の前核期受精卵の男性前核に注入するマイクインジェクションによる遺伝子導入により、遺伝子改変マウスを作成中である。さらに、平成26年度の計画【3】の一部を前倒しで実施し、抗Equatorin抗体であるMN9抗体とhEQT抗体のヒト先体マーカーとしての有用性を新学術領域研究第2回国際シンポジウムおよび第118回日本解剖学会総会・全国学術集会で発表した。また、核周囲物質MN13を認識する抗MN13抗体を用いて患者精子の質の違いを個別に評価できることを第57回日本生殖医学会学術講演会・総会で発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
概ね、平成25年度の研究実施計画に従って実験を推進する。【1-1】MN13の同定を引き続き行う。【1-2】1. EQT-EGFP-TG雄と野生型雌を交配させて得たin vivo受精卵/胚をtime-lapseで撮影してEQTの卵活性化への関連を解析する。2.胚発生における各段階で得られる試料を化学固定し、種々の特異抗体(抗精子抗体)や初期卵活性化に関わる抗MN13抗体や抗PLCζ抗体を用いて免疫組織化学的検索と電顕レベルの検索を行い、分子変化を解析する。【2】1. 引き続き、同染色体上にODF2-2α-EGFPが導入された雄と雌を交配させて両アリルにODF2-2α-EGFPが導入されたマウスを作製する。ODF2-4-mCherry TGマウスを作製し、戻し交配を行った後、遺伝子が導入された染色体を同定して、両アリルにODF2-4-mCherryが導入されたマウスを作製する。ODF2-4-mCherry TGマウスの精巣を解析し、ODF2-4とODF2-2αの発現パターンを比較する。ODF2 TG雄と野生型雌を交配させて得たin vivo受精卵/胚をtime-lapseで撮影してODF2の卵活性化との関連を解析する。2. ODF2のアイソタイプODF2-2α-EGFPにODF2-1α-mCherry、ODF2-3β-mCherry、ODF2-4-mCherryをそれぞれ繋いだvectorを現在作製中である。これらを培養細胞に導入し、中心体マーカーSP抗体 (作製済)で免疫染色し、各ODF2アイソタイプと中心体との関連を解析する。さらに、超顕微鏡を用いてそれぞれのアイソタイプの相互関係をナノレベルで解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の購入、成果発表の旅費、人件費・謝金、論文投稿費に使用する。消耗品は、主にトランスジェニックマウス作製費用と遺伝子改変マウスの維持費と受精実験に使用するものである。具体的には、薬剤、培地、実験動物、培養細胞、培養ディッシュ、チップ・ガラス器具、ペプチド合成、プライマー合成、シークエンス、2次抗体等に使用する。また、成果発表のため、国内学会(日本顕微鏡学会-大阪、日本生殖医学会-神戸、分子生物学会-神戸、日本解剖学会-栃木)に参加する予定である。
|