集中治療を必要とする重症患者を評価には、APACHEスコアやSAPSスコア、SOFAスコアなどが用いられている。これらの重症度評価システムは主に生理学的なパラメータを用いてモデルが構築されているが、モデル構築時の患者群と実際の患者群との間の差異が避けられない。また炎症性サイトカインや抗炎症性サイトカインの血中濃度は重症患者においてしばしば用いられるバイオマーカーであり、信州による生体反応の大きさを反映していると考えられるが、臓器障害の程度と必ずしも一致しない。 ATP(アデノシン三リン酸)は生体内におけるエネルギー代謝の最終産物であるため、エネルギー代謝を反映したバイオマーカーとなり得る。類似のバイオマーカーとしては乳酸が用いられているが、ATPはより直接的で精度の高いバイオマーカーとなり得る可能性がある。本研究は重症患者における重症度評価・予後予測のバイオマーカーとしての末梢血ATP濃度の有用性を検証することを目的とし、敗血症患者を中心とした重症患者において、末梢血ATP濃度の経時的変化と患者属性および転帰に関するデータを収集し、その関連を解析した。 その結果、ICU退室時および28日後の時点で予後不良であった群は、予後良好であった群と比較して末梢血ATP濃度が低値であり、また乳酸値とATP濃度との比が高い傾向にあった。これは敗血症患者、敗血症以外の重症患者とも同様の傾向であった。末梢血ATP濃度は単独、もしくは乳酸値との組み合わせにより予後予測のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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