本研究の目的は、ADHD児の母親の愛着感の側面から虐待発生のメカニズムを明らかにすることである。計33項目の愛着尺度を作成した。ADHD児の母親は、「実際の愛着感」と「理想とする愛着感」に乖離があることが考えられ、同じ質問項目を用いて現実の愛着感と理想の愛着感を問うた。因子分析(主因子法・プロマックス回転)の結果、「対児感情」「子どもの理解」「子どもに対する態度」の3因子を抽出した。現実の愛着感は理想より有意に低く、「理想-現実」の値が大きく乖離している母親が多く存在していることが伺えた。否定的な感情が肯定的な感情より高いほど乖離が大きくなり、虐待が発生する可能性が高くなることが考えられた。
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