スイスの経済学者バーゼルは、財産権を国家が個人に与える法的財産権とある財産の価値を享受する能力としての経済的財産権とに分類した。本研究は、このバーゼルの財産権に対する考え方を手掛かりとして、遺伝子組換え(GM)作物をめぐる法的財産権と経済的財産権に着目した。GM作物に対し法的財産権である特許保護が認められたとしても、GM作物が植物である以上、その利用と管理には価格に反映されない公共領域が存在するという前提に立ち、米国とカナダで係争された判例分析に依拠し、GM作物に対する特許保護は、その範囲が植物としての機能にまで及ぶ場合は、種子再利用という経済的財産権に影響を及ぼすことを明らかにした。
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