研究課題/領域番号 |
24614010
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (50295630)
|
研究分担者 |
大貫 宏一郎 九州栄養福祉大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50378668)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 栄養学 / 脳・神経 / 食品 |
研究概要 |
トリプトファン代謝産物キヌレン酸が脳で増加すると,ニューロンからのドーパミン分泌を抑制する.アミノ酸はキヌレン酸産生に関与する可能性がある.本研究では,食品栄養学的な観点から,アミノ酸摂取によってキヌレン酸産生を制御し,ドーパミン機能が関与する高次脳機能を調節することを目的とする.平成24年度には,1) in vitro実験によるキヌレン酸産生を抑制するアミノ酸のスクリーニング,2) 行動実験による高次脳機能評価系の構築を行った.下記に1) の概要を示す. in vitro実験により,キヌレン酸産生を抑制するアミノ酸のスクリーニングを行った.すなわち,ラット大脳皮質から組織切片を作成し,各アミノ酸を含む緩衝液中で培養したところ,20種のアミノ酸のうちロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,メチオニン,チロシン,システイン,アラニン,グルタミン,グルタミン酸,アスパラギン酸の10種のアミノ酸にキヌレン酸産生抑制作用が認められた.そのうちロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,メチオニン,チロシンはキヌレン酸前駆体キヌレニンの取込みを抑制することによって,キヌレン酸産生を抑制した.他の5種のアミノ酸はキヌレニンからキヌレン酸への生合成反応を抑制するという機構によるものであった.以上の結果より,食事のアミノ酸組成がキヌレン酸産生を制御し,それによって高次脳機能を調節できる可能性が示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,大きく分けて,1) アミノ酸食によるキヌレン酸産生制御,2) 行動実験によるアミノ酸食の評価,から成る.アミノ酸食によってキヌレン酸産生を制御するために,平成24年度にin vitro実験によりアミノ酸のスクリーニングを行い,平成25年度以降には実験動物を用いてアミノ酸食によるキヌレン酸産生作用を明らかにする計画であった.平成24年度は,計画通り,キヌレン酸産生を抑制するアミノ酸を明らかにすることができた.一方,行動実験によってアミノ酸食を評価するために,平成24年度に行動実験による評価系を構築し,平成25年度以降にはアミノ酸食を与えた動物を用いて行動実験による評価を行う計画であった.平成24年度は,実際に動物を評価するまでには至らなかったが,評価系を準備することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
実験でキヌレン酸産生を抑制したアミノ酸をラットに摂取させ,キヌレン酸産生を抑制し,ドーパミン代謝を亢進するアミノ酸を明らかにする. 2. 神経伝達物質の分泌に影響をおよぼすアミノ酸について検討する.in vivoにおいてもキヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸について,当該アミノ酸を多く含む食餌をラットに摂取させ,ドーパミン分泌量を測定する.これにより,キヌレン酸産生抑制を介してドーパミン分泌を亢進するアミノ酸を明らかにする. 3. 高次脳機能に影響をおよぼすアミノ酸について検討する.キヌレン酸産生抑制作用をもつアミノ酸を多く含む食餌をラットに摂取させ,高次脳機能を評価するための行動実験を行う.これにより,キヌレン酸産生抑制を介して高次脳機能に影響をおよぼすアミノ酸を明らかにする.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度における行動実験に関する計画として,行動実験を行えるよう機器類をセットアップし,セットアップが終わり次第,実験動物を用いて行動実験を行う予定であった.しかし,実験動物や実験機材の組合せが新しいものとなったため,予備実験が必要となり,行動実験のセットアップに時間を要した.そのため,実験動物を用いた行動実験を行うまでには至らなかった.平成24年度に行動実験を行う準備は完了したため,平成24年度に計画していた実験は平成25年度前半に完了させ,その後,直ちに平成25年度に計画していた実験を完了させる予定である.このため,平成24年度および平成25年度に予定していた研究費を平成25年度に併せて使用する.
|