研究実績の概要 |
ベイズ(Bayes)理論においては、或る事前分布について適当な推定量の値を与えたときの事後分布を求め、それを改めて事前分布として用いることを繰り返すベイズ更新が知られている。これはベイズ推測方式による統計実験の比較においても役立つものである。その事前分布と事後分布の差異を測ることは重要になり、その尺度としてKullback-Leibler(K-L)情報量等が知られている(Bernardo(1979), Ghosh et al.(2006))。しかし、事前分布は必ずしも正則分布とは限らず、たとえば一様分布のような滑らかでない分布も用いられる。そのような非正則な場合にはK-L情報量はその尺度として必ずしも適用可能ではないことに注意する必要がある。本研究では、まず母数θの母数空間をHとし、θの事前密度をπ(θ)として実験E=(θ,H,π)を考える。また、θの最尤推定量Mを与えたときのθの事後密度ν(θ|M)として実験E’=(θ,H, ν(・|M))も考える。このとき、実験EとE’をAkahira(1996, AISM)において導入された一般化情報量を用いて比較した。実際に事前分布としていずれも平均0、分散1をもつ正規分布、両側指数分布、指数分布を取ったときに、実験EとE’の間の一般化情報量を求め、それらの期待値を求めた。その結果、いずれの場も、EとE’の間の情報量の差異は比較的小さいことが分かった。また、特に一様事前分布が一般一様分布に近づけば、実験EとE’の間の情報量の近似差が無くなることも分かった。
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