研究課題/領域番号 |
24650557
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安武 公一 広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (80263664)
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研究分担者 |
中村 泰之 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (70273208)
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 協調学習 / 理論モデル / 力学系 |
研究概要 |
本研究の目的は,これまで自然言語に依拠して記述されてきた協調学習に関する代表的理論の基本原理と構造を数学的言語によって記述し直すことによって,協調学習研究/学習科学研究を厳密な学とするための突破口を切り開くことである.具体的には次の目標を掲げて研究を進めてきた.1) 正統的周辺参加論,最近接発達領域など代表的な協調的学習理論の構造と基本原理を力学系として数理的・公理的に記述し直すこと.2) その上で,認知神経科学などミクロ・レベルで研究が進んでいる関連研究との接合・融合を試みること. 研究初年度である今年度は,上に挙げた目的1) のために,その足掛りとなる数理モデルについて主としてSociophysicsの分野で提唱されているモデルの比較検討を行なった.具体的には 1) マスター方程式モデル 2) 微分方程式モデル 3) 確率過程モデル,のそれぞれについて,モデルの含意/モデルの利点と限界/協調学習モデルへの拡張の可能性等について検討した. さらにまた今年度では,学習空間をどのような位相空間でとらえるかという点についても議論を行なった.この点は計画調書の段階では想定されていなかった問題であるが,学習の獲得とそのダイナミクスを単純なn次元ユークリッド空間ではない空間で把握することの重要性は必要不可欠にして不可避の問題であるとして,情報位相力学を導入することの可能性について検討を進めているところである.この問題については現段階では確定した解は得られていないため,引き続き次年度において精力的にモデル化の可能性について検討する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画と多少計画の順序を変え,今年度は主として協調学習理論における力学系モデルの可能性について検討してきた.研究/議論の展開により,そもそも学習というダイナミクスをどのような位相空間でとらえるべきであるかという点について解決すべき問題があるという認識に至り,現在この問題の解決に着手している段階である.
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今後の研究の推進方策 |
計画調書の段階では研究初年度に代表的な協調学習理論について文献研究を行ない,その整理に着手することであった.このサブテーマについて現在われわれの間では,VygoskyとPiagetを統一的に把握するモデルの可能性について現在共通の認識を得ている.そこで次年度は,上で述べた学習現象を記述する空間にどのような位相を導入し,そのダイナミクスを記述するかという問題を解消した上で,この路線で協調学習理論の力学系によるモデル化(おそらくそれは確率過程モデル,特にマスター方程式を使ったモデルになることだと予想している)を進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究最終年度にあたる平成25年度では,主として研究ミーティングのための旅費,および国内外での成果報告としての旅費に研究費を使用する.また,前年度に引き続き,必要文献の図書購入費としても使用する予定である.
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