研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の検討モデルとして環境耐性或いは飛沫感染性のウイルス等を用いてナノからサブミクロンサイズ粒子を中心に検証を行っている。対象は津波などによるヘドロ堆積物由来の浮遊粒子状物質(SPM)とウイルスなどを含むバイオエアロゾルであり、これらが大気中で混和された状態を簡易型チャンバーにてシュミレーション実験を行うことで病原性ウイルスの拡散メカニズムや挙動を把握し、感染予防対策を施すための情報収集を行うことを目的とした。初年度はシュミレーション試験を行なうための簡易型チャンバーシステムの構築に取り組んだ。試験用チャンバーは、エアロゾル研究で実績のあるスウェーデン・ヨーテボリ大学と当大学の研究技師と共同で製作した。予備試験としてヨーテボリ大学の大気科学チームの協力を得て、エアロゾル発生装置(ネブライザー)、ナノサイズのエアロゾル測定装置を用いた、生物由来タンパク、脂質などから生成されるエアロゾロの粒径分布の解析を試みた。これには、本基金で購入した光学式パーティクルカウンターにて0.3μm以上の粒子数を、またそれ以下の浮遊粒子を、走査型移動度粒径測定器(ヨーテボリ大学)にて比較測定を行なった。その結果、ネブライザーによって生成したエアロゾルが、数時間に渡り安定した状態で保たれ、シュミレーションを行なう上で、実際の大気環境を反映していると考えられた。実際にウイルスやヘドロ由来エアロゾルによる試験を行なう上で、重要な知見を得た。本予備試験により、実際にウイルス、ヘドロ由来の粒子などを使う、大気環境を想定した試験を進めていく条件がほぼ終了した。紫外線と温度調整については、現在準備中である。
3: やや遅れている
チャンバーシステムの構築が終了し、気密性などの確認が終了している。当初予定していた箱形のチャンバーから、筒型にした点が大きな変更点であり、こうすることで、気密性、空気がよどんでしまう、空間を軽減することが達成出来た。また、異なる種類の生体由来物質(アルブミン)エアロゾルの生成、導入にも成功しており、安定した粒子数が確認されている。その反面、当初予定していた、紫外線の照射システムの構築が遅れており、設置の準備を進めている途中段階である。また、ヘドロ由来エアロゾルの導入方法にやや遅れが生じている。当初、ネブライザーの使用を検討していたが、溶液から生成されるエアロゾルでは、サイズ分布に大きなバイアスがかかってしまうため、個別のインピンジャーなどによる、乾式のエアロゾル生成を試験中である。
リン酸緩衝液(PBS)がネブライザーにて生成された微小サイズ(0.3μm)粒子は数時間に渡り、安定してチャンバーシステム内に保持されていることが確認されているので、異なる種類の生物由来物質をエアロゾル化して導入を進めていく。さらに、粒子サイズごとに採取可能なカスケードインパクターを使用して、異なるバイオエアロゾルの粒径ごとのウイルスゲノムを定量的に解析することにより違いを分析する。それぞれの粒径ごと分布状況を測定にて把握した後、バイオエアロゾルとヘドロ由来エアロゾルを個別に生成してから混合試験を行なう。
チャンバーシステムのメインテナンスとして、テフロンシートの交換などへの使用を予定している。また、エアロゾル中ウイルスの定量をリアルタイムPCRにて行なうため、試薬購入などに充てる。紫外線の照射を行なうシステムの構築に費用を充て、迅速に設置を行なう。初年度に使用していたポンプが故障してしまったので、再度購入する。チャンバー製作にかかる初期費用が初年度予算の約20%と想定より高価であったため、チャンバー購入を次年度予算にて一括支払いする。
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Journal of Veterinary Medical Science
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Research in Veterinary Science
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