津波によるヘドロ堆積物由来の浮遊粒子状物質(SPM)が微生物由来成分を含むバイオエアロゾルに及ぼす影響を検証することから感染の予防に向けた研究を行った。昨年度に引き続き、SPMとバイオエアロゾルが大気中で混和された状態を簡易型チャンバーにてシュミレーションする実験を行った。取り扱いが比較的簡単な非病原性のバクテリアを使用し、捕集後に培養することで、噴霧溶液中に含まれるバクテリアのCFUと、捕集したエアロゾル中に含まれるバクテリアの培養を行い、バクテリアの不活化を指標とした影響評価法を確立した。この手法を用いて、バイオエアロゾル(バクテリア)とSPM(コントロールとしてリン酸緩衝液(PBS)、ヘドロ、砂ダスト)を使用してバイオエアロゾルの不活化への影響を比較した。その結果、バイオエアロゾルとPBSを混合させた実験に比べ、ヘドロ由来SPMでは優位に低く、砂ダスト由来SPMでは優位に高くバクテリアの不活化が起こった結果となった。このことから、ヘドロ由来SPMの持つ何らかの特性がバクテリアの生存に大きく貢献していると考えられ、感染の予防に繋がる手がかりを得られたことに大きな意義がある。感染症の拡散を考えた際、ヘドロ由来のSPM以外にも多くのSPMとなる物質が存在するので、引き続きそれらがどの様に大気中の病原体と相互作用があるのか検証を行うことが重要である。今回の研究結果からヘドロ由来のSPMのどの様な性質が大きく不活化低減に結びついたのか、これらのメカニズムの検証を行っていくことは今後の環境衛生を推進していく上で重要である。最後に、本研究内容の一部を国際エアロゾル学会にて発表することができ、様々なディスカッションと多くの新たな知見、人脈を築くことができた有意義な参加であった。また、今後の研究の展開に大きく貢献する大きなヒントを学会参加にて得ることができた貴重な機会であった。
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