本課題では、日本語の終助詞「ね」の特殊な用法に対する個人の柔軟性が心の理論の能力によって説明できるという予測について、事象関連電位を援用した2回の実験を通して探索的に検証した。分析の結果、心の理論の能力が低いほど、適切性の低い「ね」の用法に対して、脳の後部により強いN170成分が認められた。N170は社会的相互作用を反映する成分と考えられており、自閉症児に強く現れることでも知られている。本課題の2つのERP実験で一貫して得られたN170からは、心の理論の能力が不十分であると、終助詞の用法を固定的に捉えているため、特殊な用法に強い違和感を生じることになるという解釈が導かれる。
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