東方に伝播したギリシア・ローマ図像のデータベース作成から、伝播には2つのタイプがあることが明瞭となった。 ひとつは伝播過程における「劣化コピー」で、ギリシア・ローマ神話の内容が十分に伝わらず図像には理解不能部分が多い。従来はこれに基づき西の「伝播力」が強調され、東は西を甘受したとする「西高東低」との認識が主であった。 しかし2つめとして神話内容を十全に理解した上で東方で図像化されたと認識すべき、ディオニュソス、スキュラ、テュケ-、ヘラクレス等の事例があることを指摘した。東の「吸引力」を認め、その最も強力な「磁場」が仏教であり、つまりギリシア文明の視座で仏教美術を見直すべきであることを示した。
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