研究課題/領域番号 |
24652176
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
伊達 仁美 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (00150871)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 剣鉾 / 祭礼用具 / 真鍮 / 金属配合比 / 民俗資料 |
研究概要 |
「剣鉾」が巡行する祭礼行事は、祇園祭の鉾の原型ともいわれ、京都とその周辺にしか見られない地域色豊かな貴重な民俗文化と考えられている。それらは、狭い町組のなかで継承されてきたものであり、その全体像を明らかにする調査の必要性が指摘されてきた。現在では、歴史学的、民俗学的な観点から調査研究がなされて来てはいるが、未だ確立されたものでは無い。特に本研究の目的である制作技法に至っては、職人の経験と口伝によるものが多く、文字媒体で残っているものは管見する限り見当たらない。このように人々の生活とともに継承されてきたいわゆる民俗文化の事例は学際的な研究として正当な評価がなされないまま眠っていると考えられる。研究代表者等は、剣先の外見的な調査から、これらの差し方や祭礼での用いられ方の違いが、材質や延展方法に関係があるのではと考え、本研究に至った。 現在まで長さや厚みの計測ならびに祭礼の形態や文字情報の調査は270本余りの剣に対して終了している。蛍光X線照射装置を用いて、剣の材質および金属配合比の測定を行った点数は、47本である。今後サンプル数を増加することで剣の用いられ方の詳細な変遷が明らかになることが考えられる。分析結果から主成分は、Cu(銅)とZn(亜鉛)であることから、目視の通り真鍮であることは明らかである。多くは職人の口伝通り、「四分六」に近い数値であるが、時代や地域、職人によって微妙な差異があることを分析することが今後の課題である。剣の中には年号や錺職人の銘が刻まれているものや、箱書きのあるものがあり、原則的に剣鉾祭礼のある神社の町組みの数だけ剣鉾を保有しており、その中には複数本保有している地区もあることから、時代性とともに材質変化の有無や差し方等との関係を明らかになるのではと考える。 その結果、文献史料には無かった情報や民俗調査で得られた結果の裏付けとすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
製作年代については、刻印や箱書きから江戸末から明治にかけてと考えられることがわかった。現在まで長さや厚みの計測ならびに祭礼の形態についての聞き取り調査や文字情報の調査は270本余りの剣に対して終了している。蛍光X線照射試験による分析は、47本であり、今後サンプル数を増加することで剣の用いられ方の詳細な変遷が明らかになることが考えられる。金属の配合比については、職人の口伝通りに近い「四分六」で製作された剣が多かった。しかし、製作技法については職人の口伝によるものであり、当該年度では明らかにはなっていない。 現在、蛍光X線分析装置を用いて測定した剣は47本と少なく、それらの金属の配合比の数値を分析し、差し鉾、担い鉾、飾り鉾といった差異の有無とともに錺職人や時代などによる差異等を分析するには至っていない。今後はさらにサンプル数の増加と、箱書きや一部の剣に刻印として残っている年号や錺職人の情報と組み合わせることによって、時代性や地域性、鉾の差し方等の祭礼形態との関係を明らかにすることも必要である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、剣の金属配合比の測定を行い、調査点数を増やす。それにより比較できるデータ量の増加、蓄積を行う。さらに京都以外で行われている剣鉾祭礼も視野に入れ、地方で保有する剣鉾の調査を行う。 計測調査を行ったものから剣自体に年号や錺職人の銘が刻印された剣を抽出したが、それを中心に金属配合比を測定する。また、剣自体に刻印されたもの以外に箱書きや文書、民俗調査から得た情報を含めるなど範囲を広げて調査を行う。また、剣のみならず、剣鉾を構成している錺、額、鈴、棹、さらにそれぞれが収められている箱などに記された年号や銘も金属配合比の測定結果と照会し、時代や地域による差異の有無を現在行われている祭礼形態や差し方、祭礼での用いられ方の傾向を探る。また、今年度行なった調査の途中経過を第34回文化財保存修復学会大会(於:東北大学)で連携研究者や研究協力者とともに「金属配合比から見る「剣鉾」の製作技法の研究‐祭礼形態におよぼす影響について‐」という題目で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、剣の金属配合比の測定を行う。次年度は京都以外で行われている剣鉾祭礼も視野に入れ、調査を行う。また、今年度行なった調査の途中経過を第34回文化財保存修復学会大会(於:東北大学)で連携研究者や研究協力者とともに「金属配合比から見る「剣鉾」の製作技法の研究‐祭礼形態におよぼす影響について‐」という題目で発表する。さらに民具学会などでの発表も予定している。そのため、旅費交通費の割合が高くなってくる予定である。
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