本研究課題はアジア低所得国の経済発展に対する日本の援助の役割を中国のプレゼンスとの関わりで政治経済学的に分析したものである。 例えば、ここ数年民主化が進むミャンマーの場合、それまでの中国との緊密な関係から微妙に外交姿勢が変化してきている。ミャンマーのテイン・セイン大統領は2011年3月30日の就任直後に中国を訪問し、新政権も親中姿勢は変わらないと思われたが、2011年9月に北部カチン州で進められていた中国資本による巨大水力発電ダムの建設中止を宣言した直後、インドを訪れ、経済援助を取り付けた。このようなミャンマー政府の対中国外交姿勢の変化の背景には、現時点では外交文書で確認できないが、アメリカ、EU、日本の外交当局の間で政策調整が行われたはずだ。ミャンマー政府のアリアー(延滞債務)解消のために日本政府が債務削減に応じたことがその傍証である. 本年度は研究最終年度であるので、このような問題意識を持って、これまでの研究総括を行った。具体的にはアジアの低所得国の経済開発における日本のODAの役割を実証的に分析した。 さらに、プノンペン(カンボジア)とホーチミン(ベトナム)で現地調査を実施した。プノンペンでは、中国に台頭が著しい中、その程度を多面的で重層的な分析する一環として、マーケットやショッピングセンター、商店などの現状を調査した。ホーチミンでは、経済発展の現状を調査し、現在のベトナムの経済力を研究した。また、昨年度に収集した資料・書籍から、カンボジア、ラオス、ベトナムでの中国の存在感の程度に関して分析し、中国の対外援助の現状と日本のODAのこれまでの歴史も分析した。現在は以上の研究成果を2本の論文にまとめている最終段階であり、1本は日本国際経済学会の全国大会に申し込み済みであり、もう1本は専門誌に投稿する予定である。
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