森と海を視野に入れた分析枠組みで、開発と環境をめぐる日本の経験を再検討した。世界遺産に登録された屋久島では、島民にとっての水産資源の存在が国有林の開発に与えた影響と、漁業者の視点から資源開発史を明らかにした。また、森と海を一体的に捉える漁業者による植林活動を資源の統治に対する抵抗と捉えて、公害反対運動の歴史に照らしながら、その地域性や歴史性、「日本的なるもの」について考察した。各時代の代表的な住民運動に見られる問題を総合的に捉える視角、資源の統治をめぐるアイデンティティの役割、言葉による抵抗に見られるレトリックの特徴など、人文学から資源・環境問題へアプローチする可能性が見いだされた。
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