2000年より始まったPISA調査の結果の公表を受けて、子どもたちの読解力向上が図られてきた。「総合的な学習の時間」においても読解力の育成が求められてきた。しかし、非連続型テキストの読解力とそれを支える論理的思考力の育成については、ほとんど手が付けられてこなかった。本研究はこれらの育成に「論理学」と「子どものための哲学」の研究成果を取り入れた教材と授業実践モデルを提案することを目的とした。 目的達成のために、3つの部門から研究を進めていった。1つめは総合的な学習における非連続型思考力の向上に向けて,子どもたちがいかに論理的にテキストを読解しているのかについて分析することであった。2つめは論理的思考力の向上に向けた論理学を取り入れた非連続型テキストの教材を開発し、さらに「子どものための哲学」の方法論を導入した授業モデルを開発することであった。そして、3つめは開発した教材と授業モデルを実践し、授業実践例として提案することである。 最終年の平成26年度は前2年間の成果を踏まえて、兵庫教育大学附属中学校において、松本、森の両方で総合的な学習・選択授業「哲学」の15回分の授業モデルを完成し、実践を行った。また、これらの授業の中から飛び込み授業として、小学校でも実践可能な内容を選定して、松本が、研究協力者:小川博士教諭の協力のもとで静岡県浜松市立和田小学校、研究協力者:篠原文教教諭のもとで宮崎県延岡市立北浦小学校において、5年生「ファーブル少年の昆虫記」として実践を行った。非連続型テキストとして図・表を用いた読解は取り上げられることがあるが、連続型テキストに音の要素を組み込み、論理的に思考させる本授業は、読解力の育成に新しい視点を加える試みであると考えている。
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