研究課題/領域番号 |
24654154
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
小西 啓之 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70178292)
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研究分担者 |
平沢 尚彦 国立極地研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (10270422)
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キーワード | 降雪量 / 測定法 / 極域 / 氷晶 |
研究概要 |
本研究はダイヤモンドダストで代表される極域の降雪の降雪量を近年開発された個々の粒子を測定できる光学式降雪量計や降雪粒子全体の空間濃度を測定できるシーロメーターなどを用いて、正確に測定する手法の確立を目指している。そのため、以下の3項目を実施した。 1)ダイヤモンドダスト作成実験:降雪粒子は様々な形状、粒径をしているので、降雪量測定時に実際に降った降雪粒子を記録する必要がある。本実験では、屋外に降る天然の氷晶の画像を自動記録する装置を作成するため、まず手始めとして実験室内で100μm程度の氷晶を連続して降らせる装置の開発を行った。実験装置は、冷却装置としてフリーザーおよび補助冷却装置を用い、高さ1.8mの円筒状の冷却筒内を-20℃程度に冷やした上で、円筒内を水蒸気で満たし、断熱膨張法によって100μmを超える氷晶を人工的に作成した。 2)氷晶連続観察装置の製作:降雪量測定検証用に実際に降った降雪粒子を記録する装置を作成した。ダイヤモンドダスト作成実験で用いた円筒内下部にUSBカメラを上向きに設置し、カメラ直上のガラス板に降り落ちた氷晶の画像を連続して記録できるようにした。また、ガラス板に降り積もる氷晶が重なり合わないよう約10秒間隔でカメラの視野内をワイパーを用いて掃除する装置も合わせて作成し、降り落ちる氷晶の連続観察装置を作成した。この装置を用いて、降雪量測定時の降雪粒子の画像を記録できるようにした。 3)北海道内陸部の陸別で、多種の光学式降水量計によるダイヤモンドダストの比較観測の実施:氷晶や微細降雪粒子を国内で最も寒い町として知られる北海道陸別で2種の光学式降雪量計、飛雪計、天秤式降雪量計、シーロメーターを用いて、11月から3月まで連続観測を行った。また、氷晶連続観察装置も陸別滞在中にのべ10日間動作させ、降雪粒子の形状を記録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた氷晶の発生実験および氷晶の自動連続観察装置の製作など、実験室で予定していた装置の開発は順調に行えた。また、陸別での観測(光学式降水量計、飛雪計、天秤式降雪量計、シーロメーター)も順調で、現時点ではデータの詳細な解析はまだ行っていないが、降雪時を含む冬季間のデータは装置のトラブルや停電などの問題もほとんどなく、データを取得することができた。極域に多く見られるような弱い降雪強度の降雪も観測されたので、今後のデータ解析によって、このような弱い降雪の降雪強度のよりよい推定法にこの観測で得られたデータが活きると考えている。 一方、検証用の降雪粒子の画像記録法として氷晶の自動連続観察装置を実際に陸別でのべ10日間ほど使用したが、まだ改良の余地が大いにあることがわかった。降雪粒子(氷晶)の空間濃度が非常に少ない場合に顕微鏡の視野内に降雪粒子が捉えられることがほとんどないことや風がわずかでもあると捕捉率が低下するなどが問題点として現れた。今後、改良して検証用の降雪粒子画像記録法を確立する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後行う研究予定項目は以下の2項目である。 1)取得した降雪時の観測データの相互間の比較 2012/13冬季と2013/14冬季に陸別で観測した降雪時の各測器(光学式降水量計、飛雪計、天秤式降雪量計、シーロメーター)間のデータ比較を行う。2013/14冬季は降雪強度検証用の天秤式降雪量計を約1ヶ月間連続して動かすことができたので、そのデータと各測器間の比較を行う。特に降雪粒子が1mm以下の小さいサイズが主たる降雪粒子であるダイヤモンドダストのような降雪に対して、各測器の測定値の相互比較(小さい粒子の測定が正確に測定されているかどうか)を行う予定である。また、約10日間動かした氷晶の自動連続観察装置を用いて得られた降雪粒子画像と各測器のデータを比較し、粒径や形状の測器依存性を明らかにする。 2)検証用の降雪粒子形状記録法の確立 ダイヤモンドダストのような空間濃度の小さい粒子の自動連続観察装置による粒子画像の捕捉率を上げるために、新たな工夫として降雪粒子を含む大気を吸引することや視野を大きくするなどを行い、来冬の観測に向けて改善する。 これらの研究結果を気象学会(春5月・秋10月)や雪氷学会(9月)で発表する予定である。
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