研究課題/領域番号 |
24655039
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小笠原 正道 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (70301231)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 面不斉 / 有機合成 / 遷移金属錯体 / 軸不斉 / 金属中心不斉 / 触媒的不斉合成 |
研究概要 |
種々のアレーンクロム錯体を基質として、ルテニウムおよびモリブデン触媒による閉環メタセシス反応が効率よく進行することを見出した。この反応において、ラセミ体の面不斉アレーンクロム錯体を基質として不斉メタセシス触媒を用いると、非常に高いエナンチオ選択性で速度論分割が進行し、面不斉アレーンクロム錯体が90%を越える光学純度で得られた。 ここで得られたブロモアレーンを有する面不斉錯体にホスフィノ基を導入することにより、新規面不斉配位子を合成することができる。この配位子は、ロジウム金属に対してホスフィン部位とオレフィン部位でキレート配位し、誘起ホウ素求核剤を用いたロジウム触媒反応において、最高99%を越える非常に高いエナンチオ選択性を示すことを見出した。さらには、この全く新しい構造を有する新規不斉配位子を効率良く合成する新たなルートの開発を行い、そのルートを基にライブラリーの構築に成功した。 プロキラルなアレーンクロム錯体を基質として用いて不斉閉環メタセシス反応を行うと、非対称化により面不斉アレーンクロム錯体が最高99%を越える光学純度で得られる事を見出した。ここで、基質にインドリル基を導入すると、面不斉誘起と同時に炭素-窒素結合の回転障害による特異な軸不斉が誘起される。ここで生じた軸不斉要素は、アレーン部位に配位しているクロム部位を除去した後も保持される事を見出した。すなわち、この反応は新たなアトロプ異性分子の触媒的不斉合成法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究において、「アレーンクロム錯体を触媒的に不斉合成する方法」を速度論分割法、および不斉非対称化法について見出している。いずれの手法も、非常に高いエナンチオ選択性を示しており、初年度の研究成果としては十分なものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度の知見に基づく研究を推進すると同時に、「金属中心不斉を有する遷移金属錯体の触媒的不斉合成」という、従来全く報告例の無いチャレンジングな反応を検討する所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
50万円弱を次年度に繰り越したが、これは予想以下の出費で研究を遂行できたからであり、本年度はこれらの余剰資金を基に研究補助などを雇い入れる予定にしている。
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