研究課題/領域番号 |
24656320
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
杉山 央 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344015)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コンクリート / 信頼性 / 品質管理 / トレーサビリティ |
研究概要 |
コンクリートのトレーサビリティを確保するための方策の1つとして、各種履歴情報を記録したICタグをコンクリート自身に投入する管理システムの開発を目指ざしている。その前段階として、本研究はコンクリート中に投入されたICタグの通信距離と指向性を明らかにし、コンクリートへのICタグ必要投入個数を計算する方法の提案を目的とする。また、コンクリート中に投入されたICタグがコンクリートの耐久性に悪影響を及ぼさないかどうかについて実験的調査を行う。平成24年度は、以下の研究を実施した。 (1)コンクリート中のICタグとリーダ/ライタとの無線通信距離・指向性の調査 通信に使用する周波数帯(HF帯、UHF帯)、形状・寸法の異なる8種類のICタグをそれぞれ1個ずつ埋め込んだ球形のコンクリート試験体を作製し、各方向からの通信の可否および通信距離を調べた。 (2)ICタグを埋め込んだコンクリート試験体の乾湿繰り返し実験 コンクリート中に投入されたICタグがコンクリートの耐久性に悪影響を及ぼさないかどうかを調べるため、乾湿繰り返し実験を行った。コンクリートは乾燥により収縮するが、ICタグのケース部分の樹脂がコンクリートの収縮を拘束してひび割れが発生するかどうかを調べたところ、異常は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従って順調に実験を行うことができた。今後、これらの成果の論文投稿および学会発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の研究を実施する予定である。 1.コンクリート中に投入されたICタグは任意の位置・角度に分布し、必ずしも通信に有利な位置および向きが確保されるとは限らない。そこで、生コンクリート工場でコンクリートを練混ぜ、8種類のICタグをそれぞれ5個ずつ投入し、実部材を模擬した試験体の型枠に打ち込む。この実験により、ICタグの分布傾向や角度の確率等が把握する。指向性の調査結果と組み合わせることにより、コンクリート中に投入するICタグの必要個数の計算方法を検討する。なお、必要個数とは必ず1つは通信可能な位置・角度にICタグが分布するためには何個のICタグを投入したらよいかという指標を表すものである。 2.コンクリート中に投入されたICタグがコンクリートの耐久性に悪影響を及ぼさないかどうかを調べるため、温冷繰り返し実験を行う。ICタグのケース部分の樹脂とコンクリートの熱膨張率の違いに起因して、コンクリートにひび割れが発生するかどうかを調べる。 3.コンクリートのトレーサビリティ確保のためには、どのような情報をどのタイミングで記録したらよいかを含めたトレーサビリティ管理システムの全体フローを構築し、プロトタイプとしてのプログラムを試作する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、コンクリート中に投入されたICタグがコンクリートの耐久性に悪影響を及ぼさないかどうかを調べるため、温冷繰り返し実験を計画している。ICタグが投入されたコンクリートは極寒地で使用されることも想定されるため、マイナス20℃程度の温度においてもICタグがコンクリートの耐久性に悪影響を及ぼしてはならない。 この実験を行うためには凍結乾燥機が必要である。このため、今年度の研究費を節約して、次年度に凍結乾燥機を購入する計画とした。
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