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2013 年度 実施状況報告書

無機・有機の融合によるナノバブル分散強化(BDS)合金の創製と強化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24656425
研究機関北海道大学

研究代表者

鵜飼 重治  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00421529)

研究分担者 大野 直子  北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40512489)
阿部 陽介  独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学部門, 研究員 (50400403)
キーワードナノプロセス
研究概要

本研究は従来の金属材料は母相中に硬い第2相を分散して強化しているのに対して、ガス気泡(バブル)をナノスケールで分散させて強化することを狙った研究である。ナノスケールのガスバブルの作製には、有機高分子(PMMA)の熱分解ガスを利用する新規試みである。
今年度はfcc構造を持つ金属であるCuを基材として、PMMA添加量を5vol.%, 10vol.%, 20vol.%と変化させた合金を作製し、最適なPMMA添加量の検討を行った。分散強化はバブルの分散間隔が狭いほど大きくなるが、今年度の研究からはCu-5vol.%PMMAのときに分散間隔が最小となることが分かった。そのときのバブル半径・体積率・分散間隔はそれぞれ7nm、1.3vol.%、119nmであり、PMMAを含まない純Cuからの硬さ増加分は439MPaとなった。
更に今年度はCu-BDSにつきTEM内引張試験から転位とナノバブルの相互作用を解析し、イットリア粒子分散強化の場合との比較検討を行った。TEM内引張試験から得られた転位離脱時の張り出し角度は約140°であり、硬さ試験結果から理論的に導き出した値と概ね同程度であった。解析からナノバブルによる分散強化は酸化物粒子分散強化よりも僅かに小さいことが分かった。さらに中性子小角散乱(SANS)測定からは、粒子の存在を表す回折強度の膨らみが数nm~sub nmの領域に渡って分布していることが分かった。
分子動力学法(MD)を利用したシミュレーション解析に関しては、αFeを対象にPMMAの熱分解ガスをヘリウムガスで模擬することにより、ヘリウムバブルと刃状転位の相互作用解析を行った。運動転位がヘリウムバブルを通過する際の転位の張り出し角度や臨界応力に対するバブルサイズ、ヘリウム内圧、および温度依存性を評価した。また、Cu中のボイドと刃状転位の相互作用解析を行い、臨界応力に対するボイドサイズおよび温度依存性を評価した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H24年度の結果に基づき、今年度はCu基BDS合金について作製プロセスの系統立った研究を行い、バブル分散条件のコントロールが可能な再現性の高いプロセスを確立させることができた。TEM内引っ張り試験から離脱角の実測を行い、真の最大せん断応力を算出した。TEM内引っ張りから求められた離脱角が硬さ試験から算出された離脱角とほぼ一致したことは今後の転位-バブル相互作用のメカニズム詳細の考察に役立つ重要な成果である。ナノバブルによる分散強化の発現機構を解明するためのMDシミュレーション解析については、バブルサイズの増加および温度の減少に伴い、転位の張り出し角度および臨界応力が増加することを明らかにした。また、αFeにおけるヘリウム内圧に関しては、減圧および加圧状態と比べて、熱平衡状態におけるヘリウムバブルの臨界応力が最も高くなる傾向を見出した。Cuに関しては、実験結果と対比して評価できるレベルにまで解析システムを整備することができた。

今後の研究の推進方策

H26年度はバブル-転位相互作用について更に知見を深めていく。H25年度までの開発過程を生かし、実験としては数種類のバブルサイズ・分散間隔を持つ合金についてTEM内引っ張り試験を行い、転位の張り出し角度を求める。引張試験時には特に転位がバブルを通過する前後に起こる現象に着目した観察を行う。観察結果とシミュレーションの結果を比較する。また、全体的なバブルの分布を正確に把握するため、SANS・SAXSの実験も引き続き行う。MDシミュレーション解析では、αFeにおけるヘリウムバブルと刃状転位の相互作用に及ぼすヘリウム内圧の影響に関する機構解明を行うことにより、実験結果に対する原子論的機構に基づく理解に資する。また、Cuに関しては、運動転位との相互作用に対するボイドと分散粒子による転位の張り出し角度および臨界応力の比較、および各障害物に対する相互作用機構の解明を行うことにより、実験で得られた転位の張り出し角度に対する粒子サイズおよび分散間隔の影響に関する原子論的定量評価に基づく考察を行う。

次年度の研究費の使用計画

消耗品の合理化による経費削減、及び機器分析試料数の合理化による学内共同利用費の削減による。
物品費:836,321円
旅費 :500,000円
その他:400,000円

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Synthesis of nano-bubble dispersion strengthened (N-BDS) metal by PMMA dissociated polymer gases2013

    • 著者名/発表者名
      N. Oono, R. Kawano, S. Shi, S. Ukai, S. Hayashi
    • 雑誌名

      Mater. Sci. Eng. A

      巻: 582 ページ: 245-247

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Irradiation effect of nano-bubble dispersion strengthened (N-BDS) alloy2013

    • 著者名/発表者名
      N. Oono, R. Kawano, S. Shi, S. Ukai, S. Hayashi, S. Kondo, O. Hashitomi, A. Kimura
    • 雑誌名

      J. Nucl. Mater.

      巻: 442 ページ: 365-369

    • 査読あり
  • [学会発表] In situ TEM observation under tensile loading in bubble dispersion strengthened copper2014

    • 著者名/発表者名
      施詩、大野直子、鵜飼重治、林重成、東郷広一、福元謙一、阿部陽介
    • 学会等名
      公益社団法人日本金属学会春期講演大会
    • 発表場所
      東京工業大学(東京都目黒区)
    • 年月日
      20140321-20140323
  • [学会発表] Comparing the strengthening effects of nano-size bubbles and oxide particles in copper2013

    • 著者名/発表者名
      施詩、大野直子、鵜飼重治、林重成
    • 学会等名
      公益社団法人日本金属学会秋期講演大会
    • 発表場所
      金沢大学(金沢市)
    • 年月日
      20130917-20130919

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公開日: 2015-05-28  

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