平均サイズが4 nmのバブルを含有するナノバブル分散Cuではバブルを含まないCu粉末焼結体に比べ硬さが増加した。このマクロな硬さ増加量から4 nmサイズのバブルと転位の間の相互作用強さ(α)を見積もると、α=0.23となった。 次にTEM内で5 nm~10 nmサイズのバブルを有するナノバブル分散Cuを引張りながら、移動する転位とバブルの相互作用を直接観察することにより、相互作用強さαを評価した。これは転位が5 nm~10 nmサイズの比較的大きなバブルに引っかかって張り出す角度を測定する方法であり、これにより得られた相互作用強さαは0.49~0.84となった。この値は通常の酸化物粒子で報告されている相互作用強さと同程度である。 体心立方構造であるCu中の転位は4 nm程度の積層欠陥を挟んで部分転位に分解する。バブルサイズが5 nm~10 nmと積層欠陥幅(4 nm)より大きい場合には、部分転位はバブルから同時に離脱して大きな相互作用を示すが、バブルサイズが2 nmと積層欠陥幅より小さい場合には部分転位は独立に離脱するため弱い相互作用を挙ることを示した。 MDシミュレーション解析では、これまでに行ってきたαFeに加えてCu中のナノバブルと刃状転位の相互作用計算を行い、BCC金属とFCC金属におけるメカニズムの違いを明らかにした。またナノバブルによる分散強化の発現機構の解明のため、PMMAの熱分解ガスをヘリウムで模擬することにより、各温度でのヘリウム/空孔比の熱平衡状態からの乖離が大きいほど、刃状転位が通過する際の臨界応力が大きくなることを示した。
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