今回の調査・研究により、シカの採食が植生の多様性・種構成・バイオマスの変化を介して、土壌溶液中の無機態窒素濃度や季節変化に影響を与えることが示唆された。植物の窒素栄養塩吸収能力は種によって異なり、土壌中での無機態窒素動態が複雑であることが明らかとなった。植生の多様性は、土壌無機態窒素濃度に直接影響を与えないにしても、その多様性がシカの嗜好種から成り立つか、不嗜好種によって成り立つかによって異なることを考えると、間接的に影響を及ぼしている可能性が示唆される。また、シカによる食害で植生に影響がでても、不嗜好種が繁茂する条件では、窒素栄養塩が多量に系外に流出することがないことが示唆された。
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