研究課題/領域番号 |
24658236
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
舟橋 弘晃 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (50284089)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | ブタ / 精液 / 膠様物 / 人工授精 |
研究概要 |
平成24年度には、膠様物の化学的特性と主要ムチン蛋白質のアミノ酸組成に関する解析を実施した。 先ず、pHが精液膠様物の溶解性に及ぼす影響を調べた結果、膠様物は強酸性(pH 1)および強アルカリ性(pH 12~13)の条件下で完全に溶解したが、弱酸性~中性(pH4~7)で白濁凝固した状態で安定していた。また、pH2~3およびpH7.5以上のアルカリ性条件下で膠様物の一部に溶解が認められた。 次に、膠様物への多核白血球の走化性の有無について検討したところ、ブタ膠様物への走化性は認められなかった。また、異なる溶媒を用いた際の精液膠様物の保水量を調べたところ、精漿との親和性が高く、保水量が最も高いことが明らかになった。 さらに、凍結乾燥したブタ膠様物粉末を精子を含む精液に混和したところゼリー状に凝固することが出来た。その後、膠様物精液を培養液中で培養することで運動精子が培養液中に出てくることを確認した。 さらにまた、膠様物のクロマトグラムは、アルカリ処理の有無で大きく変化したことから膠様物に含まれるペプチドには非常に多くの糖鎖(O-グリカン)が結合していることが推察された。トリプシン処理した膠様物のHPLCのクロマトグラムに見られるピークを分取し、プロテインシーケンサーによって膠様物に含まれるアミノ酸のN末端残基について配列分析を行った結果、一部のアミノ酸を特定することができたが、このアミノ酸配列から特定されるタンパク質について、ネット上に公開されているデータベース(Basic Local Alignment Search Tool)で検索を行ってみたものの、この配列をもつタンパク質が未知であるためか、もしくは、既知のタンパク質ではあるが、特定するには情報量として不十分だったためか、具体的なタンパク質の特定には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画は、①ブタ膠様物の化学的・生物学的性質の解明と、②ブタ膠様物・類似物質が精子の生存性・受精機能、子宮内免疫機構に及ぼす影響の解明の研究を実施することであった。上記のとおり、これらの研究については概ね実施でき、膠様物の化学的特性と主要ムチン蛋白質のアミノ酸組成に関する解析で種々の知見を得て、膠様物を用いたブタ精液の腟栓および精子カプセル化の可能性が得られた。今後、ブタ膠様物またはその類似物質を用いた人工授精への応用にかかる解析を実施し、平成25年度の実施計画にある③ブタ膠様物およびその類似物の雌性生殖道内での消化機構の解明および人工授精への利用に繋げることができたことから、上記の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は、引き続き、上記の平成24年度の研究計画の続きと ③ ブタ膠様物およびその類似物の雌性生殖道内での消化機構の解明および人工授精への利用 を実施する。 膠様物の化学的特性(組成、構造、機能)解析および類似物質の検索は、膠様物に含まれるタンパク質の同定を行うとともに、タンパク質に結合している糖鎖解析を行い、膠様物の特性を明らかにする。 ブタ膠様物・類似物質が精子の生存性・受精機能に及ぼす影響の解明を引き続き実施する。また、ブタ膠様物・類似物質注入に対する子宮内膜炎症性サイトカインの遺伝子の発現について検討を行う。ブタ膠様物の代用類似物質または精製物質が、人工授精後に有効に膣栓の役割を果たすか否かについて体外モデル(人造管および屠畜場で得たブタ雌性生殖道系)を用いて明らかにするとともに、研究協力者の協力を得て、体内でも確認する。さらに、研究協力者の協力を得て、実際の人工授精後にブタ膠様物の類似物質または精製物質を子宮内に注入し、少量の精液でも精液の逆流漏出がなく、十分な人工授精成績を上げられるか否かについての試験を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の必要経費は、初年度に引き続き、培養・解析用器材と膠様物の類似物質の検索および精液に及ぼす影響の解析に必要な免疫組織化学アッセイのための試薬(解析用抗体を含む)である。本研究に協力する大学院生の国内学会発表旅費(2名分)を含む成果発表旅費と、情報提供招聘謝金、学術雑誌での研究成果公表経費・別刷印刷費を計画している。
|