研究課題/領域番号 |
24659245
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中島 恵美 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (90115254)
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研究分担者 |
望月 眞弓 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (60292679)
萩原 将文 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (80198655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者 / 介護 / 福祉 / ヘルスケア / カウンセリング / コミュニケーション |
研究概要 |
医療文化の継承は医療人の使命である。現在の患者に学び、学問大系として後進に伝え、後進が未来の患者を癒すというプロセスが、成熟した社会の実現と維持につながる。高齢者の貴重な情報を生かす方法を検討することは重要である。また、高齢者にとって活動余命を伸ばす事が特に大切である。高齢者の「自立した生存(活動余命)生活」支援として、“やりがい”などの能動的心理を引き出す人工的会話機能を持った情報蓄積型ヘルスケアシステムを開発することを目的とした。そのため、メンタルケアや健康診断、服薬支援などを行う専門家による会話型知的ヘルスケア情報システムの総合的な構築を目指している。更に、「健康長寿生活に能動的に取り組む要因となる会話」の存在を脳科学的に証明することを検討した。 1. 知的会話システムとの日常会話による服薬状況把握と健康状態の推定・記録:服薬指導など専門家による定期的なメンテナンスのための会話情報を効率化するため、患者-薬剤師間コミュニケーション実態調査アンケートを行った。その結果、対話で伝わるメッセージに加えて非言語的なものの重要性が指摘されていた。薬剤師の非言語カウンセリングスキル向上への展望として、アイコンタクト、環境整備における意識、医師との情報共有、患者応対時間の点に関しても改善が求められた。 2. 脳科学に基づく知的会話システムの作成:発話を促す人工知能システムを作成している。また、脳科学的にその変化を評価する方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに医療面からの服薬選択・指導アルゴリズム開発を行い、下記を達成した。 1)知的会話システムとの日常会話による服薬状況把握と健康状態の推定・記録:高齢者の能動的な心理反応を引き出す会話機能を持つ知的ヘルスケア情報システムを開発するため、薬剤学講座のトリアージ資料を用いて「今日のOTC薬」を体系化し出版することができた。日本における数少ない一般用医薬品をまとめたものとなった。医療用会話に関する会話例データベース、及び、高齢者との会話情報から、健康状況を推定するアルゴリズムを構築中である。コミュニケーション実態調査のため、東京都にある病院、薬局各50施設を無作為に選択し、薬剤師を対象にアンケート調査を行った。アンケート内容は大別して、①患者と接する際に行っていること ②患者とのコミュニケーションが十分に取れないときの要因 ③コミュニケーションスキルの身につけ方 ④患者応対時の注意点について、である。言語と非言語コミュニケーションを体系化する目処が得られている。 2)脳科学に基づく知的会話システムの作成:基礎的会話の脳・身体機能への影響について、脳科学的な検討と解析を行うことを目指した。会話における主観的感覚インタビューと脳科学的アプローチを併用して測定・評価を行った。会話中の前頭前野の活動を脳血流計(NIRS))を用いて測定した。前頭前野の左右差に注目し、LI(Laterality Index)を計算し指標として用いた。認知機能検査(MMSE: Mini-Mental State Examination)により認知機能や記憶力を計測した。測定結果をメタアナリシス用解析資料としてまとめ、高齢者との効果的な会話となる会話例のデータベースを構築する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
統合型ヘルスケア情報システムの構築を目指す。作成したシステムを適用して高齢者のエンパワーメント評価を行い、会話型知的ヘルスケア支援システムのプロトタイプの作成を推進する。 1.日常的会話による高齢者への服薬指導:脈拍あるいは心拍数・呼吸(数)・血圧・体温などのバイタル情報をはじめ、健康診断による数値の変化を調べることにより、服薬による治療効果の測定を行う。 2.エンパワーメント評価:高齢者が「生きがいややりがいを維持し、自立して社会における存在感を得る」というエンパワーメント達成と活動余命生活についてのアンケート調査を実施するとともに、次世代システム開発の基盤とする。 3 会話による高齢者の健康状態推定と精神の安定化:バイタル情報をはじめ、健康診断による数値の変化、睡眠状態を調べることにより、効果の測定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は文献検索と予備調査、及び医療面からの服薬選択・指導アルゴリズム開発を充分に行った。そのため、予算使用計画を一部H24年度からH25年度に変更した。 物品消耗品費:会話システムの開発では、音声処理の向上がボトルネックとなっている。現在の音声認識ソフトウェアは技術的に完成度が低く、複数用いて統合処理する。加えて音声合成ソフトウェアも不可欠である。 旅費:研究遂行のための調査のための出張に加え、研究結果を国内外の学会で広く発表する予定であり、出張費が必要である。 人件費・謝金:各種実験時のシステムの操作などの研究補助、各種データベースおよび文生成システムからの発話に対しての主観評価実験は不可欠である。研究補助費は会話型データベース作成のため計上する。また実際に被験者から、データ取得の必要があり、そのための謝金を必要とする。また、アロマテラピーとの相乗効果を脳科学的に検証するための臨床試験の謝金と協力者である医師謝金を計上している。
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