研究課題/領域番号 |
24659412
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
頼 建光 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (80334431)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | WNKキナーゼ / OSR1 / SPAK / 蛍光相関分光法 / SLC12A輸送体 / NCC / NKCC1 / NKCC2 |
研究概要 |
腎におけるWNK-OSR1/SPAKキナーゼ-SLC12A輸送体(NCC/NKCC1/NKCC2)リン酸化カスケードの亢進は本態性高血圧発症の重要な一因である。また、WNKシグナルは大動脈におけるNKCC1のリン酸化も制御し、血管トーヌスの調節に関わる事も示されている。この系の阻害剤は,降圧作用及び血管拡張作用というdual effectを持つ新規降圧薬となり得、本研究ではその開発を目的とした。この可能性を実現すべく、WNK キナーゼとOSR1/SPAK との間に結合モチーフが存在することを利用し、両者の結合阻害をしてこの系を阻害するというアプローチを行った。蛍光相関分光法(FCS)を用いて、迅速かつ効果的に、結合阻害活性を示す化合物のスクリーニング系を確立した。WNK キナーゼ由来のRFxV/I モチーフを蛍光TAMRA で標識し、他方SPAK 由来のCCT ドメインをGST 融合蛋白として精製し、両者を混合してKd=73 nM という高親和性の結合反応の検出に成功した。この系を利用して、東京医科歯科大学ケミカルライブラリーセンターの化合物約20万種類で結合阻害活性を持つ物質のスクリーニングを行ったところ、3種類の有望化合物を同定した(IC50: 15~25μM).これらの化合物はHEK293T細胞においてもシグナル阻害活性を認めた。続いて毒性及び薬剤活性の改善を期待して、学内共同研究のもと化合物誘導体展開を実施した。得られた誘導化合物(IC50: 8.1μM)はマウスに投与可能なレベルまで毒性の改善を認め、マウス腎においてもWNKシグナルのアウトプットである各種SLC12A輸送体のリン酸化低下を認め、併せて大動脈に発現するNKCC1のリン酸化阻害効果も確認され、血管拡張作用も期待された。こうして、新規降圧薬開発へ向けて有望な化合物を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度当初、研究目的として、WNKキナーゼ - OSR1 / SPAK キナーゼ - SLC12a 輸送体シグナル伝達系の阻害化合物を、in vitro 蛍光相関分光法という新技術を導入することで高効率でスクリーニングすることを挙げた。平成24年度においては、研究実績の概要で記した通り、迅速かつ効果的に、結合阻害活性を示す化合物のスクリーニング系の確立に成功し、有望化合物の同定も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニングの結果得られた阻害活性のある薬物について、表面プラズモン共鳴法で、どちらの蛋白への結合による阻害作用かの確認を行う。培養細胞系での OSR1 / SPA Kへの WNK キナーゼ活性による阻害作用を検証し、あわせて細胞毒性の有無も評価する。 さらに、動物(マウス)への投与試験を実施し、血圧や腎臓での塩分排泄、NCC リン酸化に対する効果を検証する。PHAII モデルマウス(WNK - OSR1 / SPAK - NCC 伝達系が過剰に活性化された高血圧病態モデル)を使用して、このシグナル伝達系の阻害により、血圧の改善を含めた病態の改善が見られるか否かを in vivo ですみやかに検討する。こうして得られた候補化合物の構造的な共通性を検討し、構造生物学的によりよい薬剤の可能性をシミュレーションし、誘導体展開による阻害活性及び毒性の改善を目指す。より阻害活性の強い有望化合物については、マウスへの投与試験を通じて治療効果を確認し、医薬品使用を目的として化合物の最適化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
合成DNA、分子生物学試薬、動物購入費、アイソトープ、細胞培養試薬などに使用する予定である。
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