研究課題
WNK (with-no-lysine)キナーゼは、遺伝性高血圧を呈する偽性低アルドステロン血症II型(PHAII)の原因遺伝子で、OSR1/SPAKキナーゼとSlc12a輸送体を下流にしたシグナル伝達系を形成している。この系は、腎臓におけるNaClの排泄と、血管収縮のトーヌスを制御することにより、血圧調節に関係していることが明らかになっている。このことから、このシグナルカスケードを遮断する阻害薬は、血管拡張作用とNa排泄作用の両者を有する全く新しい機序を持った降圧剤となる可能性があると考えられる。平成26年度においては、このカスケードにおいて中心的な役割を果たすSPAKキナーゼの直接阻害薬のスクリーニングを行った。ELISA法を用いた in vitro スクリーニング系を確立し、当大学医療機能分子開発室のケミカルライブラリー所有の様々な化合物を加え効果を判定、候補化合物についてはマウスを用いた in vivo でのSPAKキナーゼ阻害効果判定を行った。具体的には、リン酸化基質としてGST-NKCC2 をELISAプレートにコーティングし、スクリーニング化合物を加えた状態でキナーゼ反応を誘導してNKCC2をリン酸化し、リン酸化NKCC2 抗体を用いて、NKCC2のリン酸化(すなわちSPAKの機能)の阻害の有無を測定した。約23,000種類の化合物のスクリーニングを行った結果、有望なSPAKキナーゼ阻害活性を持つ2種の候補化合物の同定に成功した。これらの化合物をマウスに投与したところ、腎臓におけるNCCのリン酸化低下、大動脈におけるNKCC1のリン酸化の低下が見られた。また、投与後60分程度持続する血圧降下がみられた。このように、SPAKキナーゼ阻害というアプローチから、WNKシグナル遮断薬、ひいては新規作用機序を持つ降圧利尿薬の有望なシーズを得ることに成功した。
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