| 研究課題/領域番号 |
24659939
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| 研究機関 | 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室) |
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研究代表者 |
武井 典子 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (50556537)
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| 研究分担者 |
石井 孝典 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, その他 (40597291)
石川 正夫 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (50597250)
別所 和久 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90229138)
高橋 克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314202)
家森 正志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90402916)
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| キーワード | オーラルケアマネジメント / 口腔内微生物 / 要介護度 / 肺炎 / 入院日数 |
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| 研究概要 |
日本は、急速な高齢化の進展に伴い、老人医療費・介護保険料の高騰が国民的な課題となっている。申請者らは、これまでに、某病院に隣接する介護老人福祉施設(特別養護老人ホームA、50床)において歯科がオーラルケア・マネジメントを医科・介護職員と連携して行うことにより、肺炎による入院患者数・在院日数が半減して医療費を73%削減できることを確認してきた。そこで昨年より、オーラルケア・マネジメント法を標準化して新たな施設で介入することにより、その有効性を肺炎および要介護度等から実証することを目的に3年計画でスタートした。
昨年(2012年)は、オーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発を行い、その有効性を検討するために、近隣の特別養護老人ホームB(80床)において介入をスタートした。最初に入所者全員を対象に歯科健診を行い、口腔清潔度および機能に関する検査を行った。その結果に基づき、月１回のオーラルケア・マネジメントによる介入を行うことで、口腔の清潔度指標の一つと考えられるカンジダ菌が減少するとともに、肺炎による入院者数が介入前の年間17名から、介入1年後には7名に減少した。
その後、引き続き半年に1回の検査と調査を行ないながら、得られた結果をフィードバックして2年後まで検討を継続してきた結果、今年度(2013年)は、カンジダ菌がさらに減少するとともに、肺炎による入院者が介入前の年間17名から、介入2年後も引き続き9名と低い水準を維持した。また、肺炎による入院日数は、介入前は一人平均29日から介入1年後では18日、2年後では11日に半減するという成果が得られた。要介護度については、2年経過後も有意な悪化は認められなかった。
さらに、今回は新しい特別養護老人ホーム(寝屋川市、30床)にて、開発したオーラルケア・マネジメント・マニュアルに基づき、口腔清潔度の指標を強化して介入をスタートした。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の1つである『オーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発』は、肺炎予防効果が認められた特別養護老人ホームAにおけるオーラルケア・マネジメント法を参考に、医師・歯科医師・看護師・歯科衛生士・栄養士・介護職員等の参画する関係者各々の役割分担と具体的な方法のマニュアルを作成することができたため、達成度はほぼ100％と評価する。
第2の研究目的である『オーラルケア・マネジメントの有効性の実証』は、オーラルケア・マネジメントを行っていない特別養護老人ホームBにおいて、初回検査後に今回開発したマニュアルに基づくオーラルケア・マネジメントを開始し、昨年(2012年)は口腔清掃の効果としてカンジダ菌数の減少を確認したが、口腔内の総菌数の変化を確認するには至らなかった。この理由として、含嗽ができない高齢者が多数存在したため、滅菌綿棒にて舌背部より試料を採取してPCRにて総菌数を測定したが、口腔乾燥者において試料採取法によるバラツキが大きく、得られるデータにやや客観性を欠く結果となった。そこで、2年目(2013年)には、口腔乾燥者を対象とした口腔微生物の採取法について検討した結果、一定の水分を含浸させた滅菌綿棒を、さらに定圧測定器に固定して舌背部から試料採取することで、よりバラツキが小さくなることが明らかとなった。この方法は今後他の施設にて初回検査時から導入し、その有用性を評価する予定である。
また、2年後には、肺炎による入院者数および入院日数を指標とした評価で一定の成果が得られ、研究目的とした『オーラルケア・マネジメントの有効性の実証』を進めることができた。これらの理由から、2年目の目標としてのオーラルケア・マネジメントの有効性の実証については、80％程度の達成度であり、今後、さらに医療経済学的な評価を導入して行きたい。
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| 今後の研究の推進方策 |
『オーラルケア・マネジメントの有効性の実証』については、特別養護老人ホームBにおける昨年度から2年間の実践と評価から、引き続きいくつかの課題が明らかとなった。
その課題は、1)オーラルケア・マネジメントにおける口腔清掃の有効性を細菌学的視点からより客観的に評価するための菌採取法および簡便な菌検査法の確立である。とくに含嗽ができない高齢者、口腔が乾燥している高齢者に対する手法の確立が重要となる。菌の採取法についてはこれまでに一定の成果を上げたが、オーラルケア・マネジメントの有効性を評価する上で、さらに標準化を図る必要がある。2)次に口腔機能面に関わる評価指標の確立である。現在行っている頬の膨らまし、唾液とゼリーの嚥下評価に追加して新たな評価指標の検討、さらには検査に対応した訓練法の確立が必要である。3)肺炎予防、要介護レベル進行抑制、医療経済学的な視点からの指標についても、さらなる指標の検討が必要と考えられた。今後、新たな施設における介入に先立ち、評価指標ならびに評価手法の検討を行う予定である。
3年目は、肺炎が多発している施設を選択して、オーラルケア・マネジメントの実践が高齢者の口腔と全身にどのような影響を与えるかを検討する。今年度は、いつでも誰でも簡便に口腔清潔度を評価できるよう細菌カウンターを導入して、今までのPCR法との比較検討を行う。実施にあたってのフローは以下の通りである。①施設の設定、対象者への説明と同意、②初回検査の実施、③検査結果に基づくオーラルケアプランの作成、④1ヶ月に1回の継続的オーラルケア・マネジメントの実施、 ⑤半年に１回の評価、とくに評価においては、歯科健診、検査(口腔内微生物、口腔機能の客観的検査)、各種調査(既往症、現疾患、服薬状況、要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度、口腔清掃の自立度、栄養状態、Barthel Index等)を実施する。
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| 次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、2012年より継続の特別養護老人ホームBにおけるオーラルケア・マネジメントと6カ月に1度の評価を継続した。そのための予算として、直接経費73万円（交付内定額70万円）のうち、旅費が20万円、物品費10万円を予定。さらに、京都府または大阪府の特別養護老人ホーム2施設 におけるオーラルケア・マネジメントと6カ月に1度の評価を継続する予算として、直接経費73万円（交付内定額70万円）のうち、旅費が20万円、物品費10万円を予定していたが、1施設での実施となったため、予算を20万円、今年度に繰り越した。
2014年度は、オーラルケア・マネジメントの有効性を検証するための指標の集大成として、肺炎が多発している特別養護老人ホーム1施設(60床)におけるきめ細かな介入と評価を行う予定である。初回調査より口腔清潔度を簡便に評価できる細菌カウンターを導入し、当日の細菌学的な評価に基づくオーラルケア・マネジメントおよび6カ月に1度の評価をスタートする予定である。そのための予算として、直接経費137万円(交付内定額120万円)のうち、旅費が20万円、物品費30万円、研究成果投稿・報告書作成費10万円を予定している。
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