本研究の目的は,好物を食べると,摂食嚥下が促進するかどうかを脳波や筋電図などを用いて明らかにすることだった。そこで,健康な成人に同じ硬さで異なる味の食品を摂取してもらい,食品への好みの違いが食べるときの顔の筋肉の運動や飲み込むまでの時間に影響するかかどうか調べた。しかし,食品の好みによる明らかな影響は確認されなかった。実験において,食品の硬さを揃えるために用いた食品が,参加者にとっては食べ慣れないものであり,好みがよく反映されなかったことが結果に影響を与えたと考えられた。また,運動準備電位という脳の運動の準備状態を示す脳波を捉えることを試みたが,嚥下前のそれを捉えることができなかった。
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