本研究では,細胞の力学応答機構を解明する観点から,特に血管平滑筋細胞を対象として,細胞骨格と核膜,核膜とクロマチン間の結合に着目し,これらの力学的相互作用と細胞の機能発現との関連性を明らかにすることを目的とした.平滑筋分化において,アクチン細胞骨格と核膜の結合の強化,それに伴う核内クロマチンの凝集が,細胞の収縮機能の保持に密接に関わることが見出された.また,このような平滑筋分化が実際の血管環境に近い細胞配列状態や繰返ひずみ環境でさらに促進されること,核の変形によって細胞増殖の抑制機能が発現することが示唆された.本研究により,細胞に備わる新たな「力学刺激-生化学応答変換機構」の可能性が示された.
|