本年度は、ダイヤモンド(111)膜の高品質化とδドーピング制御に関する研究を重点的に行った。高品質化に関する研究では、p型ダイヤモンド(111)膜の移動度を800cm^2/V・s@室温以上を目標とした。我々は、マイクロ波プラズマ化学気相堆積法を用いてダイヤモンド(111)ホモエピタキシャルラテラル成長をオフ角オフ方向制御した基板上で行うことで、表面平坦性の高い高品質なダイヤモンド(111)厚膜の成長を可能にした。その成長条件とホウ素ドーピングを組み合わせ、高品質なp型ダイヤモンド(111)厚膜の成長技術を開発した。また、その厚膜をレーザーカットにより自立化させ、p型半導体のCVDダイヤモンド(111)自立基板を開発した。その自立基板の移動度は、室温で830cm^2/V・sを示し、研究課題の目標を達成した。しかし、市販の単結晶ダイヤモンド基板上に成膜したダイヤモンド(111)薄膜では、その半分以下の移動度しか得られておらず、今後は薄膜でも目標の達成を目指す。δドーピング制御に関する研究では、高キャリア濃度と高移動度の両立を目指し、δホウ素ドープ層の高濃度化と薄膜化技術の開発を行った。その結果、半値幅4nm以下のホウ素濃度10^<20>atoms/cm^3のδ層を実現した。その多層δドープダイヤモンド(111)構造は、室温のホール効果測定において、キャリア濃度10^<16>cm^<-3>、移動度240cm^2/V・sを示した。今後は、δ層の更なる薄膜化とホウ素の高濃度化を行うことで、キャリアの更なる高濃度化及び高移動度化を目指す。
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