研究概要 |
本研究ではレアアース資源の安定供給確保に向けた我が国独自のレアアースリサイクル技術の確立を目指しており、水溶液系の湿式分離技術とイオン液体系の電析技術を融合することで、従来プロセスよりもエネルギー投与の少ない研究開発を目的とする。具体的には以下の研究課題を遂行した。 1.鉄族元素の選択的沈殿分離 磁石構成成分であるFe,Pr,Nd,Dyに対して、アミド酸中にFe^<2+>,Fe^<3+>,Pr^<3+>,Nd^<3+>,Dy^<3+>を濃度範囲:10^<-2>~1.0moldm^<-3>で溶解させた後、水酸化物沈殿を形成するまで、滴定剤:NaOHを投与していき、pH-log[M^<n+>ldiagram(M-Fe,Pr,Nd,Dy,n=2,3)を完成させた。その結果、Fe^<3+>はpH2~3の範囲,Fe^<2+>,Fe^<3+>,Pr^<3+>,Nd^<3+>,Dy^<3+>はpH7~8の範囲で水酸化物沈殿が形成され、pHの差を利用したFe^<3+>の選択的分離ができることが明らかとなった。 2.実廃棄物:Voice Coil Motorを用いた希土類溶解及び湿式分離 共同研究先[DOWAエコシステム株式会社]の協力を受けて、廃家電類を回収後、HDD中の実廃棄物:Voice Coil Motor(VCM)を解体・分別した。本VCMに熱減磁・メッキ剥離処理を行うことで減磁率:99.9%で脱磁されたNd-Fe-B磁石部材が得られた。次に磁石部材を自動ミルで微粉化させ、860℃,2hの酸化焙焼処理を2回行った。酸化焙焼後、アミド酸中で90℃,24h溶解させた。その後、Feを3価に転換させた上で、滴定剤:NaOHによりFeを選択的に沈殿分離した。本脱Fe工程での湿式分離率は99.5%まで達成できることが判明した。 実廃棄物~解体・分別~熱減磁・メッキ剥離~酸化焙焼~酸溶解~湿式沈殿分離(脱Fe処理)~希土類金属塩合成~イオン液体電析までの一連の希土類回収技術を特願2012-234202として特許出願まで実施した。 また、関連する研究成果は学術論文6件として公表した。
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