平成27年度は,平成24年度より継続している加速度計を用いた身体活動量(歩数,座位行動に要した時間[SB],中高強度活動に要した時間[MVPA])ならびに生活習慣状況調査を実施した.平成24年度ならび平成25年度に実施したベースライン測定(小学1年時の最大酸素摂取量,Gross motor skill[TGMD-2],新体力テスト,骨密度,体組成)に協力の得られた児童248名(男子:153名,女子:95名)のうち,1年生から3年生までの3年間の身体活動量ならびに生活習慣状況調査に欠損データがあった14名を除いた対象者234名(男子:140名,女子:94名)の縦断データを取得することができた.この解析データを用いて,ベースライン時(1年生時)の体力・運動能力が3年間の身体活動状況を説明する予測因子となるかについて検討した.その結果,1年生時の体力総合評価(各体力・運動能力項目におけるZスコアの平均値)は,1年生時よりも2年時や3年時の身体活動量項目と強い相関を示した.測定項目別では,ボールを蹴る能力や投げる能力,走能力,片足跳び(ケンケン)能力,そしてオブジェクトコントロール(道具操作における動きの獲得)能力が,低から中学年にかけての身体活動の多寡に関与している傾向にあった.すなわち,低学年時あるいは未就学時の段階で,様々な遊びや道具を使った運動経験が,その後の積極的な身体活動状況を習慣化させると考えられた. また234名のうち,出生時体重が1.5kg以上でかつ4種類の運動発達(はいはい,つかまり立ち,つたい歩き,ひとり歩き)について有効な回答が得られた男女計165人を対象に,運動課題に到達した月齢と1年時の身体活動量との関係を明らかにした.その結果,一般に最も早い段階で発達する「はいはい」をした月齢が,SB,MVPAに要した時間との間に関連が認められ,「はう」機能の発達はその後の身体活動量の予測要因としてより重要な役割を担っている可能性が考えられた.
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