研究課題/領域番号 |
24700867
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
稲田 結美 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 講師 (30585633)
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キーワード | 教師教育 / 女子教育 / 理科学習 / 男女差 / 意識調査 |
研究概要 |
日本では中学校段階で理科学習に対する女子の意識や態度が急速に低下するという問題があり,本研究は教師教育の観点からその問題状況を改善する方策を検討するものである。このような「女子の理科離れ」の一因として,教師のもつ理科に対する固定観念が授業における潜在的カリキュラムとして,学習者たちに「女子は理科が苦手である」というイメージを伝えていることが指摘されている。つまり,「女子の理科離れ」の改善には,教師の意識改革が不可欠であり,このことは同様な問題状況を抱える諸外国においても,重要視されている。 研究の初年度の平成24年度には,日本の教師のもつ理科に対するジェンダー固定観念を調査し,その教師たちを対象に女子の理科学習に関する研修を実施した後の意識変容も明らかにした。二年目の平成25年度には,教員養成系大学において小学校教員の免許取得に必修となる科目の受講生約260名を対象に,理科に関する現在の意識,理科に関連する経験の有無,高校までの理科学習における男女差の認識,理科指導の自信などに関する質問紙調査を実施した。その結果,理科に関する意識,理科に関連する経験,小学校からこれまでの理科実験での役割などについて,中学生の男女差の傾向よりも小さいものの男子学生の方が女子学生よりもやや優位であることが明らかとなった。また,自らの経験に基づき,理科学習における性差を認識しており,前年度に実施した小・中学校教師よりも性差意識が強いことも明らかとなった。さらに,理科指導の自信については,女子学生の方が男子学生よりも不利な状況にあり,女子学生の理科指導に対する不安を払拭するために,理科実験に関する実践的な技能向上の機会を提供しなければならないことを指摘することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「女子の理科離れ」を改善するための教師教育の方策を検討するために,初年度は小・中学校教師を対象に現職の教師の意識を調査し,その意識変容のための研修方法を検討した。そして,二年目の平成25年度には,これから教師になる教員養成課程の学生を対象として,学生たちの理科学習および理科指導に対する意識の現状を調査し,理科学習に関する性差意識を持っていることを明らかにすることができた。学生の意識については十分に分析することができたものの,具体的な改善策に関する実践的研究は不十分であった。しかし,大規模な意識調査によって,女子学生に対する理科の内容理解と実験の技能向上を図る方策の必要性が示唆されたことで,平成26年度における実践的研究の研究計画を立てることができたため,研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は前年度の調査結果に基づき,大学の教員養成課程の授業において,学生の理科に対するジェンダー固定観念を払拭し,男女問わずすべての学習者が理科学習に関心をもつことができ,理科実験に積極的に関わるべきであることを教師自らが体現する理科授業を学生たちが実践できるようになることを目指す。そのための具体的方策を複数開発し,実践を通して,学生の意識と態度がどのように変容するかを明らかにする。そして,三年間の研究成果と諸外国の研究動向をあわせ,女子の理科学習促進のための教師教育のあり方について総括する。 研究成果については,理科教育関連の学会にて発表し,学会誌に投稿することを計画している。また,地域の教員研修会等を積極的に引き受け,研究テーマと成果を現職の教師にも理解いただけるよう努力する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は教員養成課程学生の意識調査が主となる研究となったため,予定より多くの金額を必要とすることはなかった。さらに,最終年度の平成26年度に,方策の開発と実践を行うため,当初の予定よりも教材や授業分析のための記録装置などに多くの費用が必要となることが予想されたため,次年度に一部を繰り越す必要があると判断した。 教員養成課程の学生を対象に,大学の講義において,女子の学習を促進する理科授業を如何に構成・展開するかを指導するために,教材の開発が求められる。そのために理科教育に関する文献や資料を入手する予定である。また,学生たちの理科実験の技能向上のため,実験器具の操作練習の機会を増やさなければならず,小学校理科で使用する実験器具を大量に購入する必要がある。さらに,方策を導入した講義を記録・分析するための装置も購入する予定である。
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