本研究は、女子が男子よりも理科学習に消極的で、理科に対する興味・関心が低いという現状を打開するために、教師教育の観点から方策を検討した。なぜなら、理科授業における教師の言動が、女子の学習に潜在的カリキュラムとして大きな影響を及ぼすことから、女子の理科学習促進には教師の理科に対するジェンダー固定観念や、授業中のふるまいの変容が不可欠であると諸外国で繰り返し指摘されているからである。 まず、平成24年度には、小・中学校教師を対象に質問紙調査を実施し、教師は理科学習における男女差に無自覚であることが多く、理科指導において女子に特に配慮していないことが明らかになった。しかし、女子の理科学習に関する研修後には、男女差を認識し、女子の理科学習に関心をもつ教師が大半を占めた。 続いて、平成25年度には、教員養成課程の学生を対象に質問紙調査を実施し、理科学習に対する意識に関して、中学生の男女差の傾向よりは小さいものの、男子学生の方が女子学生よりもやや優位であることが示された。 最終年度の平成26年度には、前年度の調査結果を踏まえ、教員養成課程の学生が女子の学習促進を指向する理科授業を実践できるようになるための方策を検討した。学生(特に女子学生)の理科実験の指導に対する自信を高めるための「少人数制の実験講座」と、理科学習における男女差の実態の理解を促すための「理科学習と男女差に関する講義」を開発し実践した。これらの方策の有効性は実証されたが、今後は学生たちが女子の理科学習促進のための具体的方策を自ら考案し、学校の授業場面で実践することへと発展させなければならない。さらに、教員を目指す学生が所属する大学の特性によって、理科学習のジェンダーに関わる意識が異なるかどうかを検証するため、女子大学の教員養成課程の学生の意識調査にも着手したところであり、この結果を今後分析していく計画である。
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