本研究では、非正規雇用の拡大により、正規雇用に従来存在してきたジェンダーに基づく職域分離構造がどう変化してきたのかを検証した。小売業を対象に調査した結果、1990半ばから、2000年代半ばまで、各社は、正社員の絞り込みと非正規の増加を進め、行き過ぎた非正規化は、売上高の減少や販売実績の低下を引き起こした。経営は正規と非正規との間に、キャリア・アップしていく非正規層を作り出し、労組はそれらを組織化した。同時に従来存在してきた女性正社員層は縮小した。これは従来の「性」を基軸とした雇用区分から、「雇用形態」を基軸とした雇用区分への変化はあるものの、質的な変容はなく、「身分」制の再編に過ぎない。
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