研究課題/領域番号 |
24720048
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研究機関 | 稚内北星学園大学 |
研究代表者 |
阪本 裕文 稚内北星学園大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30381908)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 戦後美術史 / 実験映像 / 実験映画 / ビデオアート / メディアアート |
研究概要 |
平成24年度の研究調査においては、戦後日本における実験映画やビデオアートといった映像芸術の展開に決定的な影響をおよぼした松本俊夫の活動を明らかにするべく、以下の研究活動を実施した。 1:国立近代美術館フィルムセンターや映像プロダクションが所有する作品原版を調査し、作家が著作権を保有する35mm/16mmフィルム作品、27点の現存状況を確認したうえで、IMAGICA社においてHDテレシネ作業を行った。 2:作家本人が所有する文献・文書資料約360点を借用し、内容の確認を行った上で、聞き取り調査およびデジタルデータ化に着手した。 また、これらの研究成果を社会に還元するために、国内外の現代美術展覧会や研究プロジェクトへの資料提供を行った。主な実績は以下のとおり。 ア.展覧会 ニューヨーク近代美術館「Tokyo 1955-1970: A New Avant-Garde」 2012年、埼玉県近代美術館「日本の70年代 1968-1982」 2012年、久万美術館「白昼夢 松本俊夫の世界」 2012年 イ.研究プロジェクト ニューヨーク近代美術館ほか「Post Notes on Modern & Contemporary Art Around the Globe」 2012年
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的は、第一に散逸の危険性がある古いメディア(映画フィルム、旧規格のアナログビデオテープなど)によって制作された映像作品のテレシネ作業によるデジタルデータ化を行うこと、および作品に関わる文献・文書資料についての調査、およびスキャンによるデジタルデータ化を行うことにある。第二にそれらのデジタルデータ化された資料を研究者が閲覧可能なアーカイヴとして公開し、研究成果を社会に還元することにある。平成24年度の研究期間のなかで、この目的がどのように達成されたのかを整理して述べる。 第一の目的については、映像作品27点のHDテレシネによるデジタルデータ化に着手し、一部を完了させている。また文献・文書資料約360点の調査およびデジタルデータ化にも早い段階から着手しており、研究は計画以上の進展をみせているといえる。 第二の目的については、研究協力者(濱崎・江口)の都合により、川崎市市民ミュージアムでのアーカイヴ公開ではなく、アーカイヴの管理と公開を目的とするNPO法人を、研究代表者と研究協力者によって新たに設立する方向で準備を進めることになった。ただし、研究成果の社会への還元は先行して開始しており、ニューヨーク近代美術館、埼玉県近代美術館、久万美術館での展覧会に対する研究成果の提供や、国際的な研究プロジェクト「Post Notes on Modern & Contemporary Art Around the Globe」への協力によって、目的は一定の成果をすでに上げているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究においては、映像作品のHDテレシネ作業によるデジタルデータ化と、作品に関わる文献・文書資料の聞き取り調査とスキャンによるデジタルデータ化を進める予定であり、これによって本研究課題は第一の目的を達成する見込みである。具体的なスケジュールとしては、映像作品のデジタルデータ化は、平成25年9月に予定していた作業の全てを完了する予定である。文献・文書資料についての聞き取り調査とデジタルデータ化は、平成25年12月を目標として作業を進めてゆく。 これらの作業に併行して、本研究課題の第二の目的であるアーカイヴ公開を継続的に実施する組織として、NPO法人の設立準備を進めてゆく予定である。具体的なスケジュールとしては、平成25年10月までにNPO法人の認証を受け、年度内にインターネットでのアーカイヴ公開を開始させる見込みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画として、平成24年度より取りかかっていた映像作品のテレシネ作業によるデジタルデータ化の追加作業費に、平成25年度研究費の約50%を充てる予定である。HDテレシネ作業は、これまで通りIMAGICA社において行う。残りの約50%の研究費については、文献・文書資料のスキャンによるデジタルデータ化と保存作業にともなって発生する雑費(保存用ストレージボックスや、乾燥剤の購入など)に充てる予定である。
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