本研究は、中国において多様に展開した護法神像の造形化について、その理由と歴史的背景を解明しようとするものである。現地調査による造像作例の所在・基本情報の獲得と、文献・石刻史料にみられる造像記録等の博捜・収集を通して、その後の分析につなげるための基礎資料データの集成を目指した。その過程で、南北朝時代から隋唐代にいたる護法神像の全体像を構築する糸口として、1.唐代以降に姿を消した正体不明の護法神の位置づけ、2.インド・西域と中国との間を往来した伝法の高僧と護法神との関係、3.高僧信仰・羅漢信仰の文脈との照合によって、仏教の外に存在する神々と護法神との関係、という3つの視座を得た。
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