本年度は、1)日本語の話し言葉コーパスを用いたオノマトペ(擬音・擬態語)の使用傾向に関する量的分析と、2)本研究の理論的側面の追究を中心に行った。 1については、前年度に引き続き「NHK東日本大震災アーカイブス」と「NHK戦争証言アーカイブス」という視聴覚データ、および「名大会話コーパス」における雑談を中心に分析した。結果として、オノマトペにおける構文と表出性の相関(「ブラブラと」のような副詞的オノマトペのほうが、「ブラブラする」のような動詞的オノマトペよりも韻律・形態について強調的特徴を持ちやすい)が再確認されたほか、文タイプ選好(オノマトペは肯定平叙文を好む)や引用表現との頻繁な共起が観察された。 2については、構文形態論を用いたオノマトペと「と」の共起に関する論文を完成させたほか、同理論に基づく日本語の俗語表現など(例:めんどい、わくてか、ぶん殴る、インドインドした料理)に関する考察と、同理論に関する書評を発表した。また、本研究が立脚するフレーム意味論を用いたオノマトペ動詞の詳細な分析も行った。 1で観察したオノマトペの視聴覚的意味特性と、2より得たその理論的基盤は、随時、本研究が開発する「マルチメディア日本語オノマトペ事典」へと反映された。その更なる精緻化と有効性の実験的検証が今後の課題である。
以上に加えて、本年度、オノマトペ関連の書籍編集が複数件始動したことも特筆に値する。また、オノマトペを含む様態表現の言語間比較についての研究も進めており、特に1月にはラッドバウド大学のAsifa Majid氏を招聘し、関連する演題でご講演いただいた。
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