わが国の社会保障と制度上の類似性を有するフランス社会保障制度における租税の役割を検討した。第一に、租税は社会保障財源となる。フランスは資産等も課税基礎とする所得課税を採用し、高所得層に相対的に大きな税負担を負わせ、社会保障財源を通じて所得再分配を高めている。第二に、租税は政策誘導手段となる。1つは、雇用政策との関連で、低賃金層にかかる社会保険料の使用者負担分を減免して雇用を促すと同時に、保険料減免による減収は税収により補っている。もう1つは、公的医療保険を補う補足医療保険の内容適正化との関連で、基準を満たさない保険契約に対しては、保険者が納税義務を負う保険売上にかかる税率を引き上げている。
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