近年の日本の主要政党は、候補者公募や予備選挙といった「開放的な」候補者選定制度を広く採用している。本研究では、こうした新しい候補者選定制度の実態を明らかにするとともに、候補者選定方法の変容が生じた要因とその帰結について、政党組織との関連から検討を行った。 まず、候補者資格ならびに候補者選定者の包括性-排他性という次元から自民党と民主党の候補者公募制度を整理したところ、民主党の公募制度は党本部の主導性が強いのに対し、自民党のそれにはかなりの多様性があり、さらに、党地方組織が候補者選定過程に一定のコントロールを保持していることが示唆された。また、こうした開放的な候補者選定方法の採否さらには制度の包括性を規定する要因を、自民党地方組織を対象として検討した結果、候補者公募等の制度は、選挙でのパフォーマンスを向上させるため、あるいは党地方組織内の対立を調停するための手段となっていることが分かった。同時に、候補者選定過程を解放することで党内対立を惹起する可能性がある党地方組織では、それを回避しうる仕組みをとっていることも明らかになった。さらに、公募等で選定された候補者の政策的立場について分析を行ったところ、党本部の主導性が強い民主党については、イデオロギー的に穏健で改革志向である一方、地方組織が公募等を実施する自民党では、民主党と同様の傾向は見られるものの、その度合いは小さいことが確認された。これは、党地方組織の政策的な意向が、選定される候補者にも反映されているためと理解できる。 公募等の開放的な候補者選定方法には「開かれた政党」というイメージが付随する。確かに、候補者公募等の新たな仕組みは、一定程度、従来の方法では選定されなかった候補者をリクルートしてきたが、実際に用いられている方法や選定された候補者には、それを実施する党組織の意向がかなり反映されているといえる。
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