研究課題
本研究は、成熟期にある企業が衰退期に陥るのを防ぐことを目的とした、組織のミドルマネジャー層の自律的行動ならびにその経営管理に焦点を当てた。調査企業には、半導体製造装置産業のA社、調剤薬局企業のB社の2社を選出した。A社は、半導体製造装置産業の後工程で強みを発揮する企業であったが、1980年代から90年代にかけて、事業の多角化を目的に前工程の装置にも進出した。しかし、強みの工程は物理系の技術がメインであり、進出した前工程で求められる技術は化学系であったため、研究開発は難航し、経営状況は悪化していった。そうした事態を反転させたのが、当時、開発部門の責任者(ミドルマネジャー)であった。研究では、彼を中心とした事業再生の詳細を分析し、理論的考察を行った。B社は、1980年代には臨床検査事業が主事業であったが、多角化を目的として、90年代に家電量販事業、ホームセンター事業など、様々な事業に矢継ぎ早に進出した。その結果、売上高は急伸したが、財務状況も急速に悪化した。この事態を立て直すため、B社は当時、産業全体が成熟期にあった臨床検査事業(売上高の60%くらいを占める主事業)を同業他社に大胆に売却し、産業全体として成長の見込まれる調剤薬局事業に進出した。その後、B社はM&A等によって急速に成長し、2014年度現在、業界を代表する企業のひとつとなっている。研究では、業態変更に伴う内部の動向の詳細を分析し、理論的考察を行った。また、B社に所属する管理薬剤師(ミドルマネジャー)350名ほどに、企業戦略に関するアンケート調査を行った。A社とB社を比較すると、一方で、採算性の低い事業・将来性のあまり無い事業から「戦略的事業撤退」を実施したという共通点が見いだされた。他方、撤退後の新ドメインの設定に関しては、それぞれ「本業回帰」と「業態変更」という手法が選択されるなど、差異も見受けられた。
すべて 2015 2014
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World Academy of Science, Engineering and Technology
巻: 未定 ページ: 印刷中