認知症患者を介護する家族を支援する社会資源として,「認知症家族会」が注目されている。だが近年では,ピアサポート(仲間同士、当事者同士の支え合い)機能が十分に発揮できず,活動が停滞するグループが増加している.認知症家族会のピアサポート機能を十分に発揮するためには,特別なノウハウが必要である.しかし現状では,各グループは“手探り”で運営を行わなければならず,活動の停滞,グループの解散などの問題をかかえている.こうした背景を踏まえ,本研究では認知症家族会の効果的な運営に寄与するため,ピアサポート機能に注目したマニュアルの開発と評価を目的とする. 平成28年度の主な研究実績は,(1)ナラティヴ理論の精緻化,(2)運営ノウハウの蓄積,(3)運営マニュアルの開発,(4)研究成果の発表,の4点である.(1)ナラティヴ理論の精緻化としては,オープンダイアローグ・アプローチを手がかりに理論的な整理を行った.(2)運営ノウハウの蓄積としては,月1回程度開催されている認知症家族会に参加し,参加者の許可を得た上で発言内容をまとめ,発言録を作成した.(3)運営マニュアルの開発としては,オープンダイアローグ・アプローチにおける不確実性への耐性,平場のリフレクティング,ポリフォニックな対話をベースに開発を行なった.(4)研究成果の発表としては,『ケアマネジャー』(中央法規出版)における「ケアマネジャーのためのナラティヴ・アプローチ」として「①ナラティヴ・アプローチとは何か?」(2017年4月),「②ナラティヴ・アプローチの実際」(2017年5月)を執筆した.また,第5回ナラティヴ・コロキウムにおいて,荒井浩道,相川章子,濱田由紀:ピアサポート×ナラティヴ―「経験の語り」を差し出すことによる支え合い(2017年3月5日,駒澤大学深沢キャンパス)というシンポジウムを企画・開催した.
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