本研究課題では、社会福祉実践に適用可能な事前指示書の開発とソーシャルワーカーの役割について、イギリス、ドイツのモデルを参考に検討を進めてきた。 初年度は、ドイツでの法的な根拠をもとにした事前指示書の市民レベルでの相談体制が進んでいる要因について文献およびフィールド調査から明らかにした。次年度は、イギリスのホスピスに対し、フィールドワークを実施し、意思決定支援法が制定されて以降の事前指示のあり方を医療ソーシャルワーカーにインタビュー調査し、ソーシャルワーカーの役割について検討を行ってきた。それらを元に、最終年度では、わが国における事前指示書の用いられる可能性について社会福祉施設(高齢者、障害者)にインタビュー調査を実施・検討を加えてきた。医療機関では少しずつ事前指示書の取り組みがなされつつあるものの、広がりは見せていない。社会福祉施設での応用可能性については、医療に限定されている事前指示書では効果的ではないこと、成年後見制度との関連が重要であることなどが明らかとなり、より生活支援の色合いが濃い、アドバンス・ケアプランニングの適用が望まれている結果が明らかとなった。 以上をふまえ、本研究の成果は医療機関で進められているアドバンスディレクティブでは限界があること、ソーシャルワーカーは成年後見制度との関連性からアドバンス・ケアプランニングが社会福祉施設では適していることを示すこととなった。
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