研究課題/領域番号 |
24730613
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
岡村 尚昌 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 助教 (00454918)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 睡眠習慣 / 睡眠の質 / 睡眠時間 / QOL / 精神健康度 |
研究概要 |
【目的】近年,精神的健康度が睡眠時間(岡村他, 2009)や睡眠の質(菅他, 2010)と関連することが示されている。睡眠の質には入眠時間や睡眠効率など様々な要素が含まれているが,各要素と精神的健康度との関連について詳細に検討した研究は非常に少ない。これらの関連を明らかにすることは,睡眠を介した精神の健康維持と増進,生活習慣病や精神疾患の予防に繋がる。そこで本研究は,ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)と精神健康調査票(GHQ-28)を用いて,精神的健康度に影響を及ぼす睡眠の要素を多変量解析によって特定することを試みた。 【方法】 参加者: 同意が得られた大学生125名(男性56名,女性69名,年齢21±4.9)を対象にした。手続き: 講義時に一斉に,質問紙への回答を求めた。 【結果】 PSQIの下位尺度得点を説明変数,GHQ-28の総得点と下位尺度得点を目的変数とした重回帰分析を行った。PSQI によって測定された主観的な睡眠の質の7つの要素の内,日中の覚醒困難と睡眠困難はGHQ-28によって測定された全般的な精神的健康度(総得点)と4つの下位症状(身体症状,不安と不眠,社会的活動障害,うつ傾向)の悪化を有意に予測した。PSQIの下位尺度で評価される睡眠の質(熟眠感)の低下もまた,GHQ-28による精神的健康度の低下を予測した。 【考察】日中の眠気が強い人は,日中の居眠りや仮眠をすることにより就寝時間が遅くなり,生活リズムが乱れるとされている(石原・福田, 2004)。また,睡眠困難は注意・集中力の低下や疲労感を生じさせるなど,昼間の活動性を損ねる(大川, 2007)。これらのことから,精神的健康度に影響を及ぼす睡眠の質として,日中の覚醒困難と睡眠困難が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究計画書に従って、大学生を対象にフィールド調査を実施し、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)と精神健康調査票(GHQ-28)を用いて,精神的健康度に影響を及ぼす睡眠の要素を多変量解析によって特定した。これらの研究成果は、日本心理学会および国際行動医学会等で発表を行っており、当初の研究計画通りに順調に進展している。 平成25年度以降も、本年度の成果を踏まえて研究を遂行してい上で問題はないと思われる。現状では、研究計画等の変更は予定しておらず、当初の計画に従って実施する。
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今後の研究の推進方策 |
目的:唾液中の精神神経内分泌免疫学的(PNEI)反応を用いて、睡眠習慣の乱れが日常生活場面における神経系、内分泌系と免疫系の機能に与える影響を明らかにする。 対象者:研究1の対象者のうち、睡眠習慣調査票の評価によって就寝および起床時間、睡眠時間が週に4回以上、2時間~4時間の範囲で変動する学生(不規型睡眠群)と変動が2時間以下の学生(規則型睡眠群)で、研究参加に同意した者(各群40名)を対象とする。 手続き:参加の同意が得られた対象者は平日と休日の2度にわたって、唾液採取を、起床時、床後30分、60分、就寝前の合計4回行う。対象者に研究室に訪問してもらい、簡単な実験手続きと唾液採取方法の説明をした後、日常生活ストレス調査票と健康度検査を渡し、実験終了時までに記入してもらうように指示する。唾液採取は、唾液採取用スピッツ(サリソフト)を用いて行う。 PNEI反応:唾液を試料にして起床時コルチゾール反応(CAR)、free-MHPG含量、s-IgA免疫抗体産生量をガスクロマトグラフィー質量分析器(GC/MS)によって定量する(Okamura et al, 2011)。 結果の分析:睡眠習慣の乱れの有無によって日常生活場面でのPNEI反応がどのように異なるかを比較検討する。心理社会的要因生や生活習慣が与えるPNEI反応への影響性について多変量解析を行い関連性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費に関しては、すでに研究機関に設置してあるので計上していない。 消耗品として、GHQ-28、CES-D及びSF-36の購入代金、唾液を採取するサリソフト、s-IgA(MBL社EIA-IgAテスト)とコルチゾール(SAL社コルチゾルEIAキット)の測定用キット、free-MHPGを測定する際に使用する生化学定量試薬(酢酸エチル、トリフルオロ酢酸等)、サンプル保存用の消耗品(マイクロチューブ等)、データ保存や記録用としてUSBメモリを計上する。国内旅費として、日本心理学会や日本健康心理学会等での成果発表を計上する。外国旅費として、国際心理学会やアジア健康心理学会等で研究成果を発表するために計上する。謝金等として、対象者[調査参加500円(初年度のみ)、次年度以降の実験研究および介入研究参加3000円]と実験協力者への謝礼(久留米大学の条件にて時給を設定)を計上する。その他として、質問紙の印刷、成果発表費用、分析ソフトの更新料、雑誌投稿の通信費及び英文校閲料等を計上する。いずれも本課題研究を遂行するにあたり必要な経費である。
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