平成27年度では,まず,研究①として26年度から継続して行っている「睡眠習慣の乱れが急性ストレスを負荷した際の心理生物学的ストレス反応に及ぼす影響」の検討を行った。 対象者と手続き:睡眠習慣調査票の評価によって就寝および起床時間、睡眠時間が週に4回以上、2時間~4時間の範囲で変動する学生(不規型睡眠群)と変動が2時間以下の学生(規則型睡眠群)で、研究参加に同意した者(各群20名)を対象とした。実験室に入室した被験者には、15分間の順応期後、メンタルストレステスト(Stroop干渉課題)を15分間負荷し30分間の回復期を設定し実験を終了した。課題前後と回復期(15分経過時と30分経過時)に唾液採取とストレス状態質問紙(岡村ら,2004)への記入を求めた。 結果と考察:規則型睡眠群の唾液中MHPGはメンタルストレス・テスト負荷中に有意に上昇し,回復期で順応期の水準に戻ったのに対して,不規型睡眠群ではメンタルストレス・テスト負荷による有意な上昇は認められず,基礎値への回復も遅かった。睡眠習慣が乱れている学生では急性ストレスに対するノルアドレナリン神経系の反応性が低下しているアロスタティック負荷状態であることが示された。 研究2では,睡眠習慣を改善させるセルフモニタリング法を用いた介入研究を行った。 対象者と手続き:睡眠習慣の乱れがある学生のみを対象とし、認知-行動療法に基づいたセルフモニタリング法を通じて3ヶ月間取り組む介入群(15名)と質問紙のみを回答する対照群(15名)に無作為に分けた。 結果と考察:セルフモニタリング法を用いて睡眠習慣の改善を図った介入群のQOLは向上し、ストレスの自覚も軽減する傾向が示された。これらの結果はアクチグラムによって評価される客観的睡眠評価やバイオマーカーからも同様な傾向が示された。
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