本研究では、通常の学校に在籍する聴覚障害児の保護者の教育支援体制に関するニーズを探ることを目的とし、聴覚障害児の保護者が学校に求める支援について、学校全体の支援、通常学級の教員の支援、難聴学級の教員の支援、他の聞こえる児童の支援等について質問項目を尋ね、質問紙調査を行った。調査結果に関しては、聴力レベル、補聴機器、学習状況等の各要因の分析を行い、通常の学校に在籍する聴覚障害児の教育支援と、保護者への情報提供・保護者支援の在り方を検討した。 小学校で学ぶ聴覚障害児の教育支援に関して、保護者は学級での学級担任の授業における話し方の配慮を求める割合が非常に高く、聴覚障害児の学習理解への配慮を要望する傾向にあることが推察された。また、他の聴こえる児童に、学校行事や授業においても配慮を要望する割合も高かった。 中学および高校で学ぶ聴覚障害児の教育支援に関して、保護者は学級での学級担任の授業における話し方の配慮を求める割合が非常に高く、聴覚障害児の学習理解への配慮を要望する傾向にあることが推察された。また、他の聴こえる生徒に学校行事や授業においても配慮を要望する割合も高かった。 今後は、本研究の成果を基に、保護者のニーズの傾向を把握し、通常の学校においても教育支援が実施しやすい支援項目の優先順位等を検討することで、聴覚障害児が通常学校で学ぶことを支援する際の情報の資源になると考える。 聴覚障害の早期発見と早期療育の推進、補聴器・人工内耳の性能の向上、情報保障技術の進歩等、社会の進展に伴いながら、聴覚障害児の保護者の教育的ニーズを捉え、通常の学校での聴覚障害児の教育支援を充実させていくことが今後求められる。
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