研究概要 |
van Geemen-van Straten 予想の証明の簡略化に取り組んだ. この予想は, ある具体的なジーゲル保型形式が, Hecke同時固有形式になっているというものであり, そのような具体的な保型形式の構成法として, 斉藤-黒川リフトや, 吉田リフトといったものが知られているが, この予想は, それらとは本質的に異なる, 全く新しいものである. この予想を仮定したもとで, Matt Papanikolas 氏, Dermot Mccarthy氏 (テキサスA&M 大学)などの数論幾何の専門家などが、結果を得ている. 前年度までの研究での証明法では, 複雑すぎpublishする事が困難のようなので引き続き別の方法による証明を試みた所, 簡略化可能のようである. この証明法により, 一般の2次体上のHilbert保型形式から, 次数2のSiegel保型形式をL-関数を保つ構成方法を得た. 山内卓也氏との共同研究で, 具体的な方程式達で定義された三次元多様体が、あるSiegel 三次元多様体と同じL-関数を持つ事を示し, それに関するgeometricな保型形式の構成に成功した. この多様体は, 通常注目されるmiddle cohomologyが消えているものなのだが, 他のcohomology classが, nontrivialであり, そのclassに対応した保型形式を構成したのである. American Journal of Mathematics に掲載された論文でも、middle cohomologyが不均一なHodge構造をもつ場合, L-関数の部分的一致がおこっている事を示したのだが, 本研究で扱っている多様体は, それよりも更に奇抜な(保型形式論の立場からは)Hodge構造をもち, L-関数がどのような一致をみせるのか非常に興味深いと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
岩澤理論への応用, 半整数保型形式の研究に時間がとれなかった. 代数多様体と保型形式に関する研究であるvan Geemen-van Straten予想の証明の改良に多くの時間を取られたためであるが, その研究は現在大方完成しているので, 25年度は, 24年度計画どおりに進められなかった研究を進展させる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているvan Geemen-van Straten予想の研究結果は, 続く研究に必要で, また論文投稿の順番の問題からいっても, publishすることは重要である. その為に, 内容を分割して投稿するなど工夫を試みたい. 現在奈良女子大学で担当している博士前期課程の学生と, 結び目理論と整数論岩澤理論の不思議なanalogyが成立するという森下昌紀氏の研究を追随中である. この学生の教育と自分自身の研究を結び付ける事で, 教育と研究を同時に推進する方策である.
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