研究課題/領域番号 |
24740053
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
河本 裕介 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 総合教育学群, 准教授 (10531759)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 多面体 / ループ空間 / 高位ホモトピー可換性 |
研究概要 |
今年度は resulto-associahedron の構成及び高位ホモトピー可換性の構造の導入に取り組んだ.最初に permuto-associahedron を cyclohedron により組合せ的に分割し,その結果として cyclohedron が permuto-associahedron を超平面で切り取ることにより得られる多面体であることを示した.これは permutohedron を resultohedron により分割した逸見と Kapranov-Voevodsky の結果を一般化する重要な結果である.この分割に基づき,cyclohedron の新しい面ポセットを定義すると同時に resulto-associahedron の最も重要な場合を構成した.また resultohedron と permutohedron を一般化した多面体である一般 resultohedron の構成も行った. 次に cyclohedron により B(∞)-構造と呼ばれるループ空間の新しい高位ホモトピー可換性の構造を導入し,ループ積の交換法則の自由度をホモトピー論的に特徴付けた.そして B(∞)-構造と permuto-associahedron による C(∞)-構造との関係を調べた. 更にループ空間の分類空間が T-構造を持つための条件をループ積の B(∞)-構造により特徴付けた.ここで T-構造とは,写像空間と自由ループ群をホモトピー論的に調べるため Aguade により導入された重要な構造である. これらの研究結果について論文を作成し,学術雑誌に投稿した.また 2013 年 3 月に京都大学で開催された日本数学会における成果発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的の 1 つである resulto-associahedron の構成に関しては,cyclohedron を permuto-associahedron の部分空間として新しい面ポセットを定義する方法により,最も重要な場合は現在までにすでに達成され,残りの場合も方法を多少検討し直すことで次年度に達成される見込みである.また研究計画では予定されていなかった一般 resultohedron の構成にも成功し,高位ホモトピー可換性の構造の導入に必要な多くの多面体を得られた. ループ空間の分類空間がホモトピー論的代数構造を持つ空間になるための条件をループ積の B(∞)-構造により特徴付けるための研究は当初次年度に予定していたが,今年度そのホモトピー論的代数構造は T-構造であることが示され,前倒しして研究結果を得ることができた.そしてこれらの成果については,すでに学会において発表済みである. 今年度は論文の出版はなかったが,論文 1 編を執筆し,すでに学術雑誌に投稿中である.更にもう 1 編を現在準備中である.これらの理由から,本研究課題は現在まで全体的に順調に進展していると言える.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度導入した B(∞)-構造によりループ空間のホモトピー論的諸性質を解明するための研究に取り組む.まずホモトピー局所化が B(∞)-構造を保存することを証明する.応用として,B(∞)-構造を持ちコホモロジー環が Steenrod 代数上有限生成環である p-完備化された無限次元空間の分類を行う. B(∞)-構造を持つ空間の分類に関しては,最初に非安定高位コホモロジー作用素と呼ばれる方法により有限次元の場合を調べる.高知大学の逸見豊教授などこの方法に精通した研究者を訪問し,意見交換を行う.また申請者はこれまでの研究において,ホモトピー局所化による高位ホモトピー可換性の構造の保存性を証明することにより,その構造を持つ有限次元空間に対する分類結果を無限次元の場合にも拡張できる独自の方法を開発している.本研究ではこの方法を B(∞)-構造の場合に適用する. 更に今年度に引き続き残りの resulto-associahedron の構成も進める.コンピュータ・グラフィックスやファイバー多面体に関する Reiner-Ziegler の方法などを活用すると同時に他分野の研究集会にも積極的に出席し,組合せ論など多面体に詳しい研究者からの情報収集を行う. そして研究結果の得られた部分から学術論文を順次執筆し,学会などにおける成果発表を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
ホモトピー局所化や非安定高位コホモロジー作用素などの方法に精通した研究者(福岡大学,高知大学など)を訪問し,意見交換や研究の打合せを行うため,また今年度に引き続き研究集会(京都大学,北海道大学など)に積極的に出席し,組合せ論など多面体に詳しい他分野の研究者からの情報収集や各種調査を行うため及び学会などにおいて成果発表を行うため国内旅費を 330,000 円使用する. また位相幾何学や組合せ論に関係する外国図書や雑誌を購入し,最新の研究や海外の国際会議における情報を得るため設備備品費・消耗品費を 100,000 円使用する. 更に高性能のコンピュータ(NEC PC-LL750LS6B)及び各種ソフトを購入し,学術論文の執筆とコンピュータ・グラフィックスなどを用いた多面体の解析及びインターネットを通じた研究情報の収集と蓄積を行うため設備備品費・消耗品費を 250,000円 使用する.そして数式処理に関する専門的知識の提供を受けるため謝金を 50,000 円使用する.
|