研究課題/領域番号 |
24760193
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永岡 健司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60612520)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移動力学 / 微小重力 / 繊毛 / 力学モデリング |
研究概要 |
本年度では,影響因子(環境・動作・設計)に対して繊毛推進機構の並進・回転運動がどのような相互関係を示すのかを調査するため,新たに微小重力を模擬する実験装置を製作し,地上での微小重力実験を通じて,その性能を確認した.製作した繊毛推進機構を有する移動ロボット試作機は,運動計測用カメラシステムを用いて微小重力環境下での運動の軌跡を精細に解析することで,微細な挙動の確認を行った.ただし,これまでに行った事前の予備実験を受けた実験装置の改善点として,微小な振動力のスムーズな伝達を行うため剛性を保ちつつ構造の軽量化(具体的には,鉄製部品を樹脂製に変更)を行った.また,空気浮上の時間を長くするため,新たにエアベアリングを用いた空気浮上システムを採用することで,微小重力を効率的に実現することが可能となった.微小重力実験において,研究目的で挙げた影響因子(環境・動作・設計)に対して,環境と設計の因子はそれぞれ複数のバリエーションを準備し,実施することにより,影響因子に応じた偏心モータの遠心力(振動)による繊毛振動推進(マイクロホップ移動),および微小重力下で顕在化するモータ初動時のモータ反トルクによる回転ホップ動作の双方を定量的に確認することができた. また,本年度の後半には上記の実験結果を踏まえて,理論モデルの構築ならびにその数値シミュレーションのための準備を進めた.特に,複雑な繊毛の接触反力を平滑な線形バネ・ダンパ・モデルで近似表現することにより,モデル化を行い,実験結果との定性的に整合性の取れた挙動が再現できているところまで確認できた.今後の方針としては,モデルに含まれるパラメータの同定や環境・運動のバリエーションに対するモデルの適応性について解析および実験検証を進めていくこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,繊毛推進機構を偏心モータにより微小振動させることで,微小重力環境に適応したマイクロ・ホップ移動の力学理論化に取り組んでいる.本年度は理論モデリングへ向けた第一歩として,提案する移動原理による微小重力下での推進運動について,地上実験を通じて実験的に挙動を把握することが研究目的の柱としており,それについてはおおむね順調に実験解析することができた.特に,実験環境の整備については,研究代表者が所属する研究グループ内にてこれまで培ってきた微小重力模擬環境を活用することで,予定していた研究計画に対して,滞りなく実験実施を遂行できたものと考えられる.これにより,微小重力下での提案機構によるホップ運動に対する影響因子との相互作用を定量的に理解することができ,研究目的の達成に向けた重要な結果を得ることができた.また,ドイツでの落下塔を用いた高精な微小重力実験の機会を得ることができ,地上での微小重力模擬実験の結果と併せて有効な実験解析を行うことができた. 次のステップとしては,実験結果の解析から理論モデリングへの拡張について,詳細な解析・実験検証は次年度以降に取り組む主要課題と考えているが,今年度は実験結果を踏まえて,本研究課題の基盤となる力学モデルのフレームワーク構築を行い,これにより,今後の研究計画を円滑に進めるための準備を行うことができた. 以上により,本研究課題は研究計画に則して,おおむね順調に研究が進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度に構築した力学モデルのフレームワークに対して,より詳細なパラメータ同定を行うとともに,より複雑な環境変化(地形の形状や材質,微小重力など)に対する適応性を実験結果も踏まえて解析・検証していくことが主要な研究方針となる.これにより,本研究課題の研究目的である「繊毛推進機構の微小重力環境適応型ホップ移動に関する力学理論の構築」を目指す.基本的な実験環境の整備ならびに基本的な理論モデルのフレームワーク構築は既に実現できているため,それらを基盤として,今後は実験結果に基づき繊毛推進移動の力学モデルの精細化を実施してく.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度において,本研究課題では一部前倒し請求を行っている.これは,本年度の後半にドイツの落下塔において微小重力実験を行う機会を得ることができたため,その実験装置の開発および実験旅費などに捻出したものである.また,各種実験装置の製作については,当初予定していたよりも小型軽量な装置の実現が可能となり,それに併せて製作費用を抑えた設計を実現できたことにより,次年度への研究経費の繰り越しを行うこととした. 実験装置の製作に関する予算効率化の一方で,繊毛推進機構による移動力学に関する実験条件については,次年度にパラメータの影響をより精細に調査するための機構ユニットを新たに複数製作する必要が生じてきたため,次年度使用額はその製作に補填することで,研究目的の実現に向けた研究を予定どおり推進させていくものとする.
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