研究課題/領域番号 |
24760193
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永岡 健司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60612520)
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キーワード | 移動原理 / 微小重力 / 振動推進 / 繊毛機構 |
研究概要 |
平成24年度に得られた,二次元微小重力模擬環境下における繊毛推進機構の走行実験の結果に基づき、提案する機構の移動力学モデルの構築を行った.その際,微小重力環境の影響をモデルに組み込むことで,現実の力学現象を正しく表現可能なモデル化を試みた.また,力学モデルと実験結果との比較検証を行い,繊毛推進機構の移動原理を数学モデルにより表現できることを示した.これにより,本研究課題の最大のテーマであった繊毛推進機構を用いた微小重力環境課でのマイクロホップ移動原理の力学的表現の基盤構築が実現できた.さらには,落下塔を用いた三次元微小重力実験の機会を得ることができ,実験施設の機構的・時間的な制約から,観察できる挙動は限定的ではあったが,三次元的な運動についても実験を通じて確認することができた.特に,本年度に新たに組み込んだ重要な技術項目について,以下に整理する. 繊毛と走行表面との力学的な相互関係の数式化について. 本研究課題では,繊毛振動推進機構に関する既存の力学モデルを拡張した繊毛束の力学モデリングを行った.その中でも,微小重力環境下ではモータ駆動時の反トルクの影響による本体反転動作を新たに導入することで,重力環境への適用モデルへと拡張させた.また,繊毛先端と走行表面とのスリップ,反トルクによる本体反転力,スリップを考慮した接触判定,動的な弾性変形特性を考慮に入れることで,走行環境とのインタラクションをパラメトリックにモデル化することで,不確定性を含むような微小重力天体環境への適応性が議論可能な解析モデルとした.さらに,構築した力学モデルは,実験結果との定量的な比較解析によりパラメータ同定,走行状態の評価を行った. 以上得られた結果については,成果を整理し,国際会議等において対外発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,繊毛推進機構を偏心モータにより微小振動させることで,微小重力環境に適応したマイクロ・ホップ移動の力学理論化に取り組んでいる.本年度は理論モデル化を行い,実験結果との比較検証を行った.実験結果と理論モデルによるシミュレーション結果との整合性を得ることが本年度の大きな成果目標であり,それについてはおおむね充当な成果を得ることができた.特に,実験室での二次元微小重力と,ドイツの落下塔での三次元微小重力の実験環境による結果を有機的に融合することで,詳細の相互力学モデルの解析を進めることができた.研究課題の難点と考えていた不確定な物理パラメータの同定方法および影響度の解析に対しては,実験室環境下での比較解析を繰り返すことで達成することができた. 以上により,本研究課題は研究計画に則して,おおむね順調に研究が進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに得られた結果に基づき,引き続き力学モデルの精緻な解析を進めるとともに,不確定性を含めた環境下での挙動解析を行う. 特に,地上の実験装置では再現することが難しい環境を理論モデル上で構築することで,様々な物理パラメータを有する環境に対する運動解析を行う.最終的には,走行表面の摩擦特性や凹凸の影響を考慮した解析を行うだけではなく,繊毛束の設計にも自由度が多く存在しているため,多様な機構設計をモデル上で解析させることで最適な設計指針へのフィードバックを得ることを目指す. なお,最終年度までに得られた研究結果は,体系的に取りまとめ,積極的な成果発表を行っていくものとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究課題の進展に伴い,実験装置の改修および海外での微小重力実験への参加が必要となったため,平成25年度に一部予算の前倒しを行ったが,新たに構築した実験装置のうち,一部の部品がそのまま利用可能であったため,当初想定していたよりも安価に実現することができ,次年度への繰越額が生じた. 平成25年度までに実施した一連の微小重力実験において,特に落下塔実験では,実験装置への損傷が予想よりも大きく,電子部品および機械加工品の一部に劣化が見られた.そのため,次年度使用額については,次年度に地上での空気浮上装置を用いた実験解析を継続していくための実験装置の改修費用に充てることとする.
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